CCS特集

土井プロジェクトレポート3

 2000.03.20−通産省プロジェクトの「高機能材料設計プラットホームの開発」(通称・土井プロジェクト)は1999年度の終わりに近づき、予定のプログラムのファーストリリースがほぼ完成した。5月中旬にはプロジェクト参加企業にソフトを提供し、各企業において実証研究のステージに入ることになる。土井プロの集中研究グループの方は、各ソフトのブラッシュアップを進めながら、最も難しいズーミングエンジンの開発に着手していく計画。2001年度にプロジェクトが完了するスケジュールを考えると、まさに今後1年間が正念場になるといえそうだ。

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 土井プロジェクトの目標は、ポリマーなどの高分子材料の設計支援システムを国産技術で確立することである。しかし、ポリマーは原子・分子レベルから実際の成形品になる材料レベルまで、時間および空間スケールで10の15乗もかけ離れた広大な領域の問題を扱うことになり、現在の計算理論ではアプローチできない側面が多かった。

 そこで、それら高分子材料のメソスケール(ミクロとマクロをつなぐ中間領域)をシミュレーションできるユニークな計算理論をプログラムとして確立し、広大な時間スケール/空間スケールを自由に“ズーミング”するように解析できるCCS環境を構築することを目指している。

 旭化成工業、宇部興産、JSR、住友化学工業、東芝、日本ゼオン、日本総合研究所、日本ポリオレフィン、富士通、富士写真フイルム、三井化学、三菱化学からフルタイムの研究員が派遣されて、名古屋大学の土井正男教授のもとで集中研究が行われている。

 「メソスケールをカバーする粗視化分子動力学法、動的平均場法、分散構造シミュレーション法の3つの計算エンジンに加えて、まだ不十分な点も多いがエンジン群を統一的に操作するプラットホームも基本機能は出来上がってきた。なかなか面白いものになったと思う」と土井教授。

 「自動車にたとえると、いまはエンジンとシャーシが組み上がったところ。これから内装や外装を加えて、用途に応じた車に仕上げていかなければならない。そのためには、企業サイドで具体的なテーマに適用した研究を進め、計算対象に合わせてプログラムをつくり込んでいく必要がある。うちの研究員は各企業から来ているので、コンサルティングなどでうまくタイアップしていけるだろう」と話す。

 今年の秋から年末にかけて各企業からの報告を集約することにしており、参考になる適用事例がたくさん集まれば、プロジェクトの成功に向けて大きく前進するとみられる。

*土井プロジェクトは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から化学技術戦略推進機構(JCII)が委託を受けたかたちで実施されている。

(次回は11月掲載予定)