英AWEが重金属を捕捉する新型分子を開発
MSIのCCS製品が活躍
2000.02.02−英AWE社が排水中の重金属を効率的に除去できる新しい分子を開発した。ティーカップのような形状をしたカリキサレンと呼ばれるタイプの分子で、カドミウムや鉛、水銀、ウラニウムなどの金属を捕捉して強固な錯体を形成することがわかったという。オックスフォード大学などと共同で研究していたもので、開発に当たっては米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)のコンピューターケミストリーシステム(CCS)が活用された。
AWEは、英国の核抑止力に関するさまざまな技術の設計から検証、製造までを手がけてきた企業だが、最近では軍事関連で蓄積した技術の民間への技術移転に力を入れており、その一環で環境関連の先端技術開発に取り組んでいるもの。
今回の分子はカリキサレンの一種で、活性部位はカップ型の分子構造の底の部分にあり、特定の金属への選択性を高めるように設計することが可能。同社によると、一般的なイオン交換樹脂法よりも、その選択性の高さで利点が多いという。捕捉した金属は回収してリサイクルに回すことができ、総合的な環境対策の面でも優れている。
具体的な用途としては、廃棄物からのウラニウム除去、水道向けの鉛除去フィルターカートリッジへの応用、顔料および電池工場の排水からのカドミウムや鉛の除去とリサイクル、汚染された土壌のクリーニングなどが考えられるという。
今回の分子は、英国で特許が成立した模様。
カリキサレンをCCSで解析した他の事例としては、米エネルギー省(DOE)のグランドチャレンジプロジェクトの一環で、米シラキュース大学が米パシフィックノースウエスト国立研究所と共同で行った研究がある。