独ライオンが米トライポスに資本参加

バイオインフォマティクスとケムインフォマティクスを統合

 2000.02.09−バイオインフォマティクス関連のIT(情報技術)ベンダーである独ライオン・バイオサイエンス社は、米国の大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーであるトライポス社に対して株式投資を行い、強固な戦略提携を結んだ。ライオンの持つバイオインフォマティクス技術とトライポスのケムインフォマティクス技術を合体させ、ゲノム情報を活用した新薬の研究開発を支援する新しいソフトウエアを共同開発していく。

 現在、CCS市場では、分子の構造や性質を調べて生理活性の高い化合物をみつけ出そうとする計算化学的なアプローチに代わり、遺伝子に代表される生命情報から新薬のアイデアを得ようとするバイオインフォマティクス式のシステムに焦点が移ってきている。その意味では、CCS市場の新たな再編の口火を切る提携になる可能性がある。

 今回、トライポスは発行済株式数の5%に当たる49万9,091株を転換可能な優先株として発行し、それをライオンが一株当たり22ドル、合計900万ドルで買い取った。これは、トライポスの全公開株の10.8%に相当する。この結果、ライオンのフリードリッヒ・フォン・ボーヘンCEOはトライポスの役員会に加わる。トライポスの株価(NASDAQ)は昨年秋までは7ドル前後をうろうろしていたが、昨年末から上昇し、この提携直前の7日の終値は20.5ドルとなっていた。

 ライオンは1997年設立で、数100種類の世界中の遺伝子関連データベース(DB)を統合し、大量のゲノム情報の解析を実現するトータルシステム「BioSCOUT」(商品名)で知られている。最近では、新薬開発に必要なあらゆるデータを網羅する“iバイオロジー”構想を打ち出しており、今回のトライポスとの資本提携もその戦略の一貫と位置づけられる。

 トライポスとライオンが共同開発するシステムは「GenChem」と名付けられており、一つのITプラットホーム上で、遺伝子から分子、細胞、生物組織、さらにハイスループットスクリーニング(HTS)データや各種化学情報までを統合し、解析できるようにする包括的な機能を提供する。

 とくに、バイオインフォマティクスとケムインフォマティクスを統合して利用することにより、生物学的・医学的なゲノム情報をもとにして新薬候補化合物を生み出すための開発過程を大幅に加速させることができるという。さらに、毒性やADME(吸収・分布・代謝・排出)データを統合できるなど、開発の方向性を定める判断材料が質量ともに増加するので、デシジョンサポートとしても強力なツールになりそうだ。

 国内では、ライオンはCTCラボラトリーシステムズが、トライポスは住商エレクトロニクスが代理店を務めているが、共同開発される製品の販路などはまだ決まっていない。