英OMGがChem-X事業を中止

1980年代前半からの歴史に“幕”

 2000.05.19−欧州最大のコンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダー、英オックスフォードモレキュラーグループ(OMG)が、ケムインフォマティクスとコンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)などの包括的システムである「Chem-X」の事業を中止した。開発をストップ、販売も取りやめた模様。OMGのホームページ内でこのことがごく簡単に告知されている。Chem-Xは1998年4月に英ケミカルデザイン(CDL)を買収して取得した事業だった。既存ユーザーへの技術サポートは来年3月まで継続される。

 OMGは、これまで欧米の10社以上のCCSベンダーを次々に買収・合併して拡大してきた。ところが、今年の3月には米CACheサイエンティフィック(1995年2月買収)の分子モデリングシステム「CAChe」を富士通に売却するなど、ここへ来て製品群の整理を進めはじめている。

 Chem-Xを開発したCDL社は、1983年2月に設立され、1987年に理経が総代理店となって国内にも紹介された。当時は、旧DECのスーパーミニコンVAXとエバンス&サザランドのグラフィック端末とを組み合わせて使うシステムで、データベースから分子モデリング、分子シミュレーションまでの機能を持ち、有機低分子からたん白質、無機やポリマーにまで対応できる総合的なCCSだった。

 理経が代理店を降りたあと、90年代前半は国内では空白期となっていたが、ウィンドウズおよびマッキントッシュ版を中心に1995年4月から帝人システムテクノロジー(TST)が新たに代理店となっていた。その後、CDLは1996年4月に英国で株式上場したが、1998年4月にOMGに買収され、今日に至っている。Chem-Xの導入実績は、世界で800−900ライセンスほどだとみられ、国内では50社ほどのユーザーがいるようだ。

 Chem-Xは機能は豊富だが、設計が古い部分が多く、最近ではコンビナトリアルライブラリー構築やファーマコフォア探索、レセプタースクリーニングなど、もっぱらコンビケム/HTS分野で利用されていた。しかし、Chem-X関連の売り上げの70%はメンテナンス収入であり、新規ライセンス契約が伸び悩んでいたことが今回の事業中断に至ったポイントだったとみられる。

 事業の再構築を進めているOMGのこれからの方向性も注目されるところだろう。