菱化システムが加CCGのMOE最新版

5年間の契約更新、ウェブ対応/de novo機能など強化

 2000.05.12−菱化システムは、加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)が開発した統合コンピューターケミストリーシステム(CCS)「MOE」(商品名)の最新版を発売した。実績豊富なコンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)関連の機能に加え、ポストゲノムで注目されるたん白質モデリングを中心とした医薬品開発支援機能を強化している。とくに今回、インターネットブラウザーを活用できるウェブ対応が可能になり、イントラネット環境で誰にでも使いやすいシステムを簡単にカスタマイズできるようになった。適用機種もSGI、サン、ウィンドウズに加えて、HP、Linuxにも広がったことで、さらに幅広いユーザー層への浸透を図っていく。

 菱化システムは、1997年9月からCCGの総代理店を務めており、このほど5年間の独占販売契約(2005年3月まで)を更新したばかり。

 MOEは、使いやすく生産性の高いCCS開発・稼動環境を提供するもので、独自の“SVL”(サイエンティフィック・ベクター・ランゲージ)をベースにしている。SVLはJavaに近いイメージのインタープリター言語で、バーチャルマシン上でソースコードをダイレクトに実行させる。このため、バーチャルマシンが用意されていれば、どんなプラットホーム上でも移植なしでプログラムを走らせることが可能。

 MOEのすべてのプログラムはこのSVL言語で書かれているため、ユーザーはそのソースコードを自由に利用でき、機能を追加したりカスタマイズしたりすることも容易。SVLは、プログラミング言語というよりも、オブジェクト指向型で分子を操作するスクリプトの感覚で利用することができ、トレーニングは1日か2日で終わるほど簡単なものだという。

 このため、独自のアルゴリズムを組み込んだり、徹底的にカスタマイズをして独自のCCS利用環境を構築したりしたいなど、ブラックボックス的な市販ソフトに飽き足らないヘビーユーザーに好まれている。

 また、CCGからもさまざまなアプリケーションがSVLソースで提供されており、たん白質のホモロジーモデリングやQSAR(構造活性相関)関連の機能、HTSのデータ解析で有効なバイナリーQSAR機能などが揃ってきている。とくに、数10万化合物をコンパクトに扱える優れたデータベースシステムを持っているため、大量の実験データを扱うコンビケム/HTS分野で導入実績が多く、国内でも製薬会社を中心に20サイトほどのユーザーがある。

 さて、今回の最新版では、ブラウザーを通してジョブを起動できるMOE/Web機能が追加された。ブラウザー内で構造式の作図もでき、logPの推算とホモロジー検索をブラウザーから行うことができる。MOEとのインターフェースをHTMLで記述すれば、他のアプリケーションやジョブを自由に組み込むことも可能。コマンド方式では使いにくかったユーザーにも、簡単に利用できる環境を構築することができるようになった。

 また、MOE/Webはコストパフォーマンス的にもメリットがある。MOEのライセンス契約はトークン(引換券)方式で、例えば基本契約の4トークンで、ユーザーはグラフィック環境(3トークンを消費)と1ジョブ(1トークンを消費)を利用することができた。ところが、ウェブ機能は1トークンの消費なので、ブラウザーを使うことで、同時に3ジョブを実行させることが可能なのである。

 一方、コンビケム研究を対象にしたQSAR機能が強化され、クリッペン博士らが昨年に開発した新アルゴリズムによるlogP/MR推算機能の追加、また分子の2次元構造だけで3次元の情報を得るための記述子を拡張した。2次元構造だけで分子の体積を高精度に予測することができるので、大量の情報を効率良く解析にかけることができる。

 さらに、生体内の受容体の立体構造が分かっている場合、それに適合しやすい医薬品の分子構造を探索する“de novo(デ・ノボ)”デザインツールが提供される。未知たん白質に対するMOEのホモロジーモデリング機能は以前から高い評価があるため、今回の新機能を組み合わせれば、新薬開発の強力な武器になる。

 今後、CHARMMの力場の搭載など、ストラクチャーベース薬物設計機能を強化していく予定という。