菱化システム:MOEの販売を加速

大量データを高速・コンパクトにハンドリング可能

 2000.06.27−菱化システムは、コンピューターケミストリーシステム(CCS)のニュープラットホームである加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の「MOE」の販売を加速させる。完全なオブジェクトコンポーネント型の設計思想で開発されており、ソースコードがすべてオープンにされているため、カスタマイズや機能の追加が自由に行えるという特徴がある。ほとんど唯一の“ブラックボックス”ではないCCSとして、ファン層が急速に広がっている。

 MOEは、SVL(サイエンティフィック・ベクター・ランゲージ)と呼ばれる独自の高級言語で開発されており、起動時にSVLソースコードで書かれたコンポーネントをダイレクトにコンパイルして実行させる。このため、すべてのプログラムはソースで提供されるので、ユーザーはそれをみて処理ロジックを理解し、変更を加えることも容易になる。

 MOEの特徴はその洗練されたアーキテクチャーからきており、とくに大量のデータをコンパクトかつ高速に扱えることで評価が高い。すべてのデータは共通の分子スプレッドシートで扱うことができるが、例えば3次元の分子構造をともなう20万−30万件の化合物の展開が一般的なノートパソコンでも簡単に行えてしまう。ディスクから直接データを読み出し、実メモリーをほとんど使用しないためだが、スピードにまったくストレスはない。大量の情報を扱うコンビケム分野で圧倒的な支持を受ける機能だという。

 プロテインデータバンク(PDB)からたん白質のアミノ酸配列情報とその立体構造データをセル内に読み込んで、一気に表示するなど驚くべきパフォーマンスを備えている。ワークシートのセルの中で、たん白質の複雑な分子構造を拡大・縮小・回転させるなど自由に扱えるのである。

 通常のCCSでは、モジュールによって計算の出力形式が違うことが多いが、MOEの場合はすべて共通のスプレッドシート形式で出力されるので、モジュール間のデータ互換性は完全に保たれる。

 また、完全なマルチタスクを実現しているので、構造最適化の計算を走らせながら分子構造そのものを修飾するようなことも問題なく行える。例えば、五員環と六員環をつなぎ合わせていくだけで、自動的にサッカーボール状の構造を形成していくことになる。

 そのうえ、SVLはCCSアプリケーションに適した記述言語であるため、プログラムの開発効率は抜群。最新論文のアルゴリズムがすぐにサポートされるのも強みだ。MOEはライフサイエンス系のアプリケーションが中心であり、ポリマーをモデリングする機能はもともと備わっていないが、あるユーザーの要望があったので、菱化システム側で合成ポリマーのビルダー機能をわずか1−2日でつくってしまったという実例もある。