米MSIが材料系CCSで米コンパックと提携
コンビナトリアル材料科学の応用など共同推進
2000.09.01−大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーの米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)は、材料設計向けCCS事業で米コンパックコンピュータと業務提携を結んだ。まずは、材料系CCSの新製品「マテリアルスタジオ」(商品名)をコンパックマシン向けに提供していくほか、新しいコンピューター利用技術の共同開発や、コンパックマシン上でのソフト開発と動作テスト、両社製品の共同マーケティングの実施などを含め、包括的な提携関係に発展させていく考えだ。
今回の提携は、材料系のシミュレーションとインフォマティクスのためのソリューションの開発と提供を通じて、材料開発の理論と実験との橋渡しをし、CCSを利用したユーザーの研究開発(R&D)を活性化させるのが目的。MSIとコンパックはこのために正式に覚え書きを取り交わした。主な対象は化学産業だが、アプリケーションの範囲としてはエレクトロニクスや航空・運輸、食品、化粧品、医薬品などの開発が含まれている。
MSIは、材料系CCSの主軸を今年の春に発売したウィンドウズ版新製品である「マテリアルスタジオ」に3年かけて移行させる計画を進めているが、パソコンおよびPCサーバーで世界トップクラスの実績を持つコンパックとの提携により、その普及に弾みをつけたい考え。
マテリアルスタジオでは、分子動力学計算や量子力学計算などの大規模演算をネットワークサーバー上で分散処理させることが可能であり、その点でもコンパックは高性能なアルファプロセッサーを採用したアルファサーバーのTru64UNIXシステム、さらにインテルまたはアルファベースのLinuxシステムを持ち、クラスターモデルなどのハイパフォーマンスコンピューティング環境でも強力な製品群を擁している。
とくに、コンパックのコンピューティングソリューションとMSIのマテリアルインフォマティクスサービスが合体することにより、コンビナトリアル材料科学とハイスループット実験技術に基づく大量の研究情報を、効率良く管理し活用することが可能になっていくとしている。
今回の提携に関しては、MSI製品の既存ユーザー並びにコンパック側からの要望が大きかったとみられる。MSIの材料系CCS製品群のコンパックマシンへの移植に当たっては、その費用および設備面も含めてコンパック側が全面的に協力する模様。ただ、Tru64UNIXやクラスターシステムのサポートは早くても来年になるだろう。
MSIでは、大手化学会社のR&DおよびITマネジャーで構成される“ケミカルインダストリー・アドバイザリーカウンシル”を組織しており、ユーザー産業界の要望やノウハウを取り入れながら開発を進めていく方針を打ち出している。今回の提携についても、その影響力が働いたとも考えられる。実際、コンパックはMSI製品のサポートを前もってユーザーに約束するような動きをみせていたということだ。
なお、最新のマテリアルスタジオ開発計画によると、2001年第1・四半期にポリマーのモンテカルロシミュレーション機能がバージョン1.2としてポリマーコンソーシアムメンバー向けに提供される。2001年第2・四半期にはバージョン1.3がリリース予定で、第一原理分子動力学の「CASTEP」、密度汎関数法の「DMol3」が追加され、グラフィック機能も改良される。このバージョン1.3は、触媒コンソーシアムのメンバー向けに2001年3月から早期リリースされるという。 −2000.09.05修正