米MSIが製品体系の刷新を計画

DB/インフォマティクスを核に最新IT技術導入

 2000.07.12−大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーの米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)は、今後の製品戦略の一部を明らかにした。サイード・ザラビアン社長(米ファーマコピアの最高執行責任者を兼務)がインタビューに応えたもので、大量の研究情報を縦横に活用するためデータベース(DB)やインフォマティクス技術を中心に製品体系を刷新させる。プラットホームは、UNIX系から徐々にウィンドウズ系にシフトさせていく。クライアント側のソフトも大きく変わる予定で、3−4年後には新体系が全ぼうをあらわすことになりそうだ。

 MSIは、これまで計算を中心にした分子設計、物性予測などの技術を提供してきた。近年、コンビナトリアルケミストリーやハイスループットスクリーニング(HTS)、ハイスループット実験(HTE)などの技術の進歩により、研究で活用すべきデータ量が急激に拡大。それにともない、計算対象が増し加わって計算結果のデータも拡大する方向にあり、これら大量の情報を効率良く管理するDB/インフォマティクス系のシステムが中枢的な役割を果たすようになると考えられている。ゲノム情報を利用する創薬研究の活発化も、DBの重要性の高まりに拍車をかけている。

 ファーマコピア/MSIは、今年2月に化学DB技術を持つ英シノプシスを買収。ケムインフォマティクス事業部門を新設し、中核的な製品に育てていく方針を打ち出した。

 同事業部門は、化学DBパッケージ製品を販売するとともに、オブジェクトコンポーネントベースのツールや技術、アプリケーションソリューションやシステムインテグレーションサービスを提供していく。とくに、オラクルまたはマイクロソフトアクセスをバックエンドのDBサーバーとして利用する製品体系を確立しつつある。具体的には、ORACLE8のデータカートリッジ技術に対応した「アコード・ケミストリー・データカートリッジ」を開発、最新のIT(情報技術)スタンダードにのっとったアーキテクチャーに変わってきている。

 プラットホームは、サンのSOLARISとウィンドウズNT、Linuxで、開発ツールにAccord SDK、インフラとしてのAccord for ORACLE、インテグレーションのためのオブジェクト技術標準としてCOM/CORBA/ODBCを採用、オブジェクトコンポーネントとしてAccord Visual Objectを提供し、Visual BASICとORACLE Forms、ウェブを開発環境とし、アプリケーションクライアントとしてAccord Desktopが用意される。このアーキテクチャーをベースにして、具体的なアプリケーションシステムをソリューションとして開発し、提供していくことになる。

 将来的には、これらのソリューションの形で、コンビケム/HTS/HTEのデータマイニングなどのDBアプリケーション、計算化学/分子モデリングアプリケーション、ウェブアプリケーションなどが開発されることになる。これらのシステムを利用するためのクライアントは新しいものになるが、ザラビアン社長によるとマイクロソフトオフィススイートに近いイメージだと考えることができるという。

 「マイクロソフトオフィスには、ワードやエクセル、パワーポイントなどがあり、それぞれクライアントの見た目は違う。しかし、共通的なユーザーインターフェースの考え方でつくられている。例えば、私自身はよくプレゼンテーションを行うので、パワーポイントの操作には自信がある。しかしながら、決して得意ではないもののエクセルを扱うこともできる。ベースのアーキテクチャーが同じだから使うことができるわけだ」とザラビアン社長。

 現在開発中のWebLab2が、このアーキテクチャーに基づく最初の製品になるようだ。ただ、まだまだ開発段階で、実際に新しい製品体系がはっきりとあらわれてくるのは3−4年後になるという。

 また、分子設計支援システムのプラットホームとしては、ライフサイエンス系はサーバーは現在のUNIX中心から2001年にはUNIX/Linux/NT用を並立させていく。2004年か2005年にはNTがメインになる。クライアントの方は今年からUNIXとNTを並立させるが、やはり将来的にはNTオンリーになる可能性がある。マテリアルサイエンス系はNTへのシフトが早いと考えており、2001年からはサーバー、クライアントともにNTがメインになっていくようだ。

 今後は売り上げの26%を研究開発投資に費やしていく考えであり、いずれにしても新製品ラッシュが予想される。

 一方、ファーマコピアは現在1億7,700万ドルのキャッシュを用意しており、近い将来にバイオインフォマティクス系のベンダーの買収を計画中。ポストゲノム領域をターゲットにしており、詳細は不明だがアノテーションを含むDBといったコンテンツプロバイダーなどが対象になる模様。いまのところ、ファーマコピアのグループには、CCSの主要市場のうちバイオインフォマティクス分野だけが欠けているため、それを埋め合わせることによってCCS市場での地位がさらに磐石になるといえるだろう。