米MSIがサン・マイクロとドットコムで提携
ソラリス環境に移植、遺伝子ASPサービスを強化へ
2000.09.06−大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーの米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)は、ドットコム分野で米サン・マイクロシステムズと提携した。ゲノム情報を利用した新薬開発のためのケムインフォマティクスおよびバイオインフォマティクス関連のソフトウエアを、サンのUNIX系OS(基本ソフト)であるソラリス上に移植する。今回の提携には、サンのエンタープライズサーバーを使って遺伝子関連のASP(アプリケーションサービスプロバイダー)事業を展開している米ダブルツイスト社もかかわっており、MSIのソフトウエア技術をインターネットを通してさらに強力な環境で提供することが狙いとなっている。
MSIは今年からファンクショナルジェノミックスコンソーシアムをスタートし、アミノ酸配列のホモロジー検索からたん白質立体構造の予測、そのたん白質の機能推定まで、新薬を開発するためのジェノミックス研究の一連の作業をアウトソーシングするサービスを提供。とくに、ゲノム情報をもとにした大量データ解析に対応させた形で各種のツール群を統合した「ジーンアトラス」、またMSIが独自に作成したアノテーション(注釈)付きデータベース(DB)「アトラスベース」を構築している。同コンソーシアムのメンバーになると、これらのツールを自由に利用できる。
その一方で、MSIは今年の2月にインターネット上で遺伝子DB/バイオインフォマティクスのASPサービスを提供している米ダブルツイストにジーンアトラスの一部の機能をライセンス供与し、doubletwist.com(http://www.doubletwist.com)を通してもそれらの機能を利用できるようにしている。
ただ、ダブルツイストはASPサーバーとしてサンのエンタープライズサーバーで構成されるソラリスベースのクラスターシステムを採用しているため、MSIのジーンアトラスがSGI/IRIX上でしか動作しないことが問題点だったようだ。ダブルツイストにとっては、系統の違うサーバーを管理・運用する手間や、またユーザーに提供できるサービスのパフォーマンスに格差が生じるなどの不利益を抱えていたと考えられる。
今回、doubletwist.comに提供されているジーンアトラスのなかから、第一弾として「モデラー」「SeqFold」「CHARMm」「DelPhi」「CNX」といった製品群がソラリスに移植される。ただ、その移植完了時期と、ダブルツイストがサーバーをSGIから更新する具体的計画またはその時期はいまのところ明らかにされていない。
ドットコム分野ではサンのサーバー製品が高いシェアを有しているため、今回の移植は自然な流れとして理解できるが、MSIにとってはファンクショナルジェノミックスコンソーシアム関連のプラットホームにサンが加わる意味は大きい。サンのマシンがかつてのバイオブームの時から遺伝子解析分野で多用されてきたという事実に加え、最近になって各コンピューターメーカーともバイオインフォマティクスのサーバー市場に猛烈な売り込みをかけているため、ユーザーの多様な要求を満たすという観点からもソフトベンダーとしてSGIのみのサポートでは不安があるからだ。
MSIとサンの関係が今後どのように進展するかは未定だが、MSIのバイオインフォマティクスおよびストラクチュラルバイオロジー製品の主要プラットホームの一つになっていくことは間違いないだろう。