菱化システムがGeneAtlasをパッケージ販売へ

医薬品ジェノミックス研究をハイスループットで支援

 2000.11.14−菱化システムは、構造・機能ゲノム解析のための総合支援システム「GeneAtlas」(ジーンアトラス)の販売を開始した。米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)が開発したもので、今年からスタートした「ファンクショナルジェノミックスコンソーシアム」に参加する企業が利用できたシステム。ただ、国内ではコンソーシアムへの加盟は荷が重いと感じるユーザーが少なくないため、システムだけを単独で販売することにしたもの。アミノ酸配列のホモロジー検索からたん白質立体構造の予測・機能推定まで、新薬を開発するためのジェノミックス研究の一連の作業をハイスループットで実施することができる。UNIXからLinuxのクラスターシステムまで幅広いプラットホームで動作する。

 GeneAtlasは、ファンクショナルジェノミックスコンソーシアムの核となるシステムである。このコンソーシアム自体は一種のアウトソーシングサービスで、メンバーは自社で研究中の配列データをMSIに預け、MSI自身がGeneAtlasを駆使してターゲットのたん白質の機能や活性部位を予測した結果をメンバー企業にフィードバックするというサービスを提供している。もちろん、メンバーのオプションとして、GeneAtlasをインハウス導入する契約も可能だった。

 しかし、製薬会社を中心とする国内ユーザーの中には、外国でのコンソーシアム活動に参加することに対する経済的および精神的負担を重く感じるところもあり、国内においてはむしろシステムを社内に導入して使いたいというニーズが強かったという。

 GeneAtlasは、MSIの汎用グラフィックモジュール「Insight2」上で利用するソフトウエア群から構成され、生体高分子用のグラフィック環境を提供する「バイオポリマー」、アミノ酸配列から類縁たん白質を使ったホモロジーモデリングと高次構造予測を行う「ホモロジー」、遠縁の参照たん白質を探し出すためのスレッディング法の「SeqFold」と3D−1D法の「プロファイル3D」、参照たん白質のアミノ酸配列を用いてターゲットのアミノ酸配列の立体構造を自動的に構築する「モデラー」、ターゲットのたん白質の機能や活性部位を予測する「バインディングサイトアナリシス」、さらに強力なホモロジー検索機能を持つ「PSI-BLAST」などのソフトで構成されている。

 とくに、PSI-BLASTについては、その解析によって得られたプロファイル情報を、PDB(プロテインデータバンク)が作成しているプロファイルと突き合わせる独自手法を採用しているため、通常のPSI-BLASTによるホモロジー検索よりも相同性の低い参照たん白質をみつけ出すことができるという。

 そして、これらのシステム全体がバッチ処理のパイプラインとしてハイスループット化されているのがGeneAtlasの特徴であり、大量の配列データを扱うのに適している。18個のペンティアム3(600MHz)で構成されるLinuxクラスターで、1日に600シーケンス(平均的なバクテリアなどのゲノム)ほどを解析する性能がある。

 解析結果は三次元アノテーション(注釈付き)データベースとしてオラクルに蓄えられ、「AtlasBase」の名称で提供される。ユーザーはこのデータベースも利用できる。

 MSIの親会社であるファーマコピアは、オックスフォードモレキュラーグループ(OMG)の買収にともない、バイオインフォマティクス専業のジェネティックコンピューターグループ(GCG)を傘下に収めており、将来的にはGeneAtlasとGCGの技術が統合されていく予定。菱化システムとしても、ポストゲノム時代に向けたバイオインフォマティクス分野への取り組みを強化していく。