栄研化学と富士通が遺伝子増幅技術で提携
LAMP法専用のプライマー設計支援ソフトを年内に製品化
2001.01.23−臨床検査薬大手の栄研化学と富士通は、遺伝子診断の基本技術とされる遺伝子増幅技術開発で提携した。栄研化学が開発した“LAMP法”(ランプ法)におけるプライマー(複製を開始させるために必要な短いDNA)を設計するための専用ソフトを共同開発し、同技術の普及、ソフトの販売で協力していく。富士通は3月末までにプロトタイプを完成させ、栄研化学側でのプログラムの評価を経て、年内に製品化を実現する予定である。
遺伝子診断は、病原体の遺伝子の有無や病気に関連する遺伝子の変異などを調べて、遺伝病・感染症などにかかっているかどうかを診断したり、個人に固有の配列の一致を調べて親子の判定や犯罪捜査の一環などに応用したりする技術。この時、遺伝子増幅法を用いることで、より詳細な遺伝情報を得ることができるようになるため、遺伝子増幅法と組み合わせた診断技術の研究開発が注目を集めている。
遺伝子増幅技術では、スイス・ロシュ社が基本特許を持つPCR法(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応法)が最も多く用いられている。二本鎖DNAを一本鎖に変性し、それをプライマーと結合、耐熱性ポリメラーゼ(耐熱性酵素)を使用して結合したプライマーからDNAを合成する。この一連の工程を温度変化により制御するもので、これによりDNA配列の任意の部分を10の7乗倍にまで増幅することができる。
これに対し、栄研化学が1999年11月に発表したLAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)は、PCR法に比べて特異性が高く、さらに100倍以上の増幅効率が得られ、温度の複雑な管理操作がいらないため装置や手順が簡単であるなどのメリットがあるという。
具体的には、二本鎖DNA、6つの領域を認識する4つのプライマー、鎖置換型DNAポリメラーゼ、基質などを同一容器に入れ、一定温度(65度C付近)で保温することにより、検出までを1ステップの工程で行うことができる。増幅効率が高く、DNAを15分−1時間程度で10の9乗−10乗倍に増幅することが可能。特異性が高いため、増幅産物の有無で目的とするDNA配列の有無を判定することができる。この手法はSNPs(一塩基多型)の高速検出などへの応用も可能で、テーラーメード医療への貢献も期待できるという。
ただ、LAMP法用のプライマーの配列設計を支援できるソフトが存在しないことが懸案だった。今回、バイオインフォマティクス関連ソフトの開発で実績のある富士通と共同で開発することが得策だと判断し、提携関係を結ぶことにしたもの。開発するのはLAMP法に適したプライマー候補を出力できるよう、最適なパラメーター条件やアルゴリズムを組み込んだ専用ソフトで、通常のパッケージソフトとして提供するほか、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)形態でサービスすることも検討しているようだ。いずれにせよ、ソフト面が整うことで、LAMP法自体の普及拡大に弾みがつくと期待される。
栄研化学は近くゲノム専用ホームページを開設する予定で、富士通の研究者向けドットコムサービス「NetLaboratory」(http://www.netlaboratory.com)との技術情報の連携を図っていく。両社は、相互にメリットのあるテーマについては今後とも交流を深めていく考え。