富士通と三菱化学がバイオ分野で協業
ゲノム創薬をターゲットに技術提携、新事業も検討へ
2001.03.06−三菱化学と富士通は、バイオテクノロジーとIT(情報技術)を融合し、それぞれの事業強化と新しいビジネス創出を目的として協業することで合意した。三菱化学が富士通のバイオインフォマティックス技術を利用してゲノム創薬事業に取り組む一方、富士通も協業から得たノウハウをフィードバックしてバイオインフォマティックス事業のさらなる発展を目指していく。具体的な共同研究のテーマや新事業展開の方針については、今後数ヵ月間をかけて検討を進めて行く予定。
今回の提携は、バイオテクノロジーの幅広い領域のなかでも“創薬”の部分が中心になる模様。三菱化学はライフサイエンス分野でキーとなる遺伝子操作・機能解析技術、たん白質解析技術、細胞操作技術など、遺伝子から細胞・組織・個体までの生命現象を体系的に把握するための豊富な知的財産を蓄積してきている。
グループ内には、30年にわたるバイオ研究の歴史を持つ三菱化学生命科学研究所、医薬品開発の前臨床試験を手がける三菱化学安全科学研究所、国内第3位の臨床検査機関である三菱化学ビーシーエル、中堅製薬メーカーの三菱東京製薬、医療診断装置メーカーのユカメディアス、バイオインフォマティックスなどに強いソフトベンダーの菱化システム、バイオ技術を利用して植物の品種開発などを行っている植物工学研究所−などがあり、そのほかにも国内外のバイオベンチャーなどへの出資、大学・研究機関との共同研究などを幅広く推進している。
一方の富士通は、1983年からコンピューターケミストリーシステム(CCS)事業を推進。ここ数年は新薬開発を目的にしたライフサイエンス分野が市場の中心になっているため、バイオインフォマティックスに関する取り組みを強化しつつ、1999年11月にそれまでの「コンピュータケミストリシステム部」を発展させて「ライフサイエンス推進室」を設立、ドットコムサービス「netlaboratory.com」(http://www.netlaboratory.com)も開設している。
また、富士通研究所における関連アプリケーションの研究開発、システム子会社を通じての関連パッケージ開発、ソリューションビジネスなども推進している。これにより、CCSおよびバイオインフォマティックスで海外も含めた事業基盤を持つ国内最大のITベンダーとなっている。
今回の具体的な協業内容に関しては、両社からの検討チームを発足させて細かく話し合っていくが、基本的にはゲノム創薬やテーラーメード医療時代を視野に入れた新しいライフサイエンス社会に対応できる事業を模索していく。
まずは、三菱化学は富士通の技術を利用してゲノム創薬事業を推進。富士通は、ゲノム創薬に最適なコンピューターの研究開発を行ってプラットホーム事業を強化する。また、三菱化学生命科学研究所を今回の協業のための重要な基礎研究拠点と位置付け、その運営や活用形態に関しても検討を行うことにしている。