サン・マイクロシステムズ:デイビッド・ジー副社長、Sun TechDays基調講演

発展するインターネット社会、新たに3つの賭け

 2001.02.09−サン・マイクロシステムズは、2月6日と7日の2日間、ソフトウェア開発者向けコンファレンスの「Sun TechDays」を開催した。米本社からソフトウェア部門のデイビッド・ジー副社長が来日、基調講演に登場し、そのあと記者懇談会を行った。社会全体がインターネット経済に移行していること、コンピューターのソフトウェアやサービスが大きなパラダイムシフトの最中にあることを強調した。その中で、サンはネットワーク社会を支える技術とサービスを提供するリーダーであり続けると述べた。

 ジー副社長の発言の要旨は以下の通り。

 1.ドットコムビジネスは、1年前は利益よりもシェア拡大に勢力を傾けていたが、ここへきてやはり利益をあげることが重要だという認識に変わってきた。しかし、サプライチェーンのコスト削減、従業員とのコミュニケーションの円滑化、ユーザー顧客に対する情報提供などの側面でインターネット経済は依然として成長しており、その重要性は変わっていない。

 ただ、パソコンの全盛期は過ぎた。これからも10数%程度の成長はするだろうが、別のインターネット接続用デバイスが急激に伸びるだろう。2004−2005年には、ほとんどの人がいわゆるパソコン以外のものでインターネットにアクセスするようになると考えられている。

 2.サンは1995年に3つの賭けをした。インターネットの普及、バンド幅の拡大、ネットワークサービス(Java)の浸透だ。これらは全部当たった。

 昨年、サンは「The Net Effect」(ネット効果)という言葉を打ち出した。これは1.5−2年でコンピューターの処理速度が倍増するという“ムーアの法則”、ネットワークのバンド幅が1.5年で倍増するという“ギルダーの法則”、ネットワークに接続する人が1.5年で3倍増し、ネットワークの有用性が指数的に増加するという“メトカフの法則”−の3つの相乗効果が「ネット効果」として現れるという考え方である。

 これにより、インターネットプロトコル(IP)が至るところで利用されるようになる。テレビやラジオ、電話はもとより、電球にさえIPアドレスが割り振られるかもしれない。例えば、あと100時間で電球が切れるというメッセージが照明サービス会社に通達され、それをもとに消費者はいつも快適な照明のサービスを受けられるということになる。あらゆるものが常にネットにつながっている状態が実現されるだろう。

 3.サンは新しく3つの賭けをする。マッシブスケール、コンティニュアスリアルタイム、インテグレーテッドスタック−の3つだ。

 これからのネットワーク社会には、巨大なユーザーとデータベース、データウェアハウスをサポートできる超大型のメガサーバーと、ログイン認証やプロキシー、コンテンツ配信などさまざまな機能を果たす小型サーバーが多数必要だ。これがマッシブスケールである。

 こうしたデータセンターがダウンすることは許されない。世界中を相手にしているので、何か障害が起こったとき、休日にゆっくり復旧を図るといった余裕はない。継続的に稼働し続けること(コンティニュアスリアルタイム)を実現する技術基盤が必要とされる。

 そのためには、ハードとソフトが深いレベルで統合されることが求められる。チップやストレージ、OS環境、データベース、アプリケーションまで全体を統合するようなインプリメンテーションが必要だ。それがインテグレーテッドスタックの意味するところで、われわれはオラクルやベリタスなどのパートナーとすでに協業体制をとっている。

 4.今後のアプリケーションは、ネットワークからダウンロードできるサービスに変貌していく。巨大なアプリケーションは、ネットワークサービスのコンポーネントから構成されるようになるだろう。したがって、コンピューターのAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)はネットワークのAPIに変わる。現在のマルチプラットホームの考え方は、サービスのネットワークという考え方に変質するだろう。そして、ネットワークはWWWを包含するさらに巨大なものとなるだろう。

 アプリケーションのネットワークサービスへの移行はすでに始まっている。eメールが好例だ。例えば、2万人の社員を抱える企業が年間1,000万ドルでメールシステムを運用していたとする。しかし、その企業は本業とかかわりのないことで余計な心配をしたくないので、メールシステムをそっくりアウトソーシングしようと思うかもしれない。また、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、ヘルプデスクをアウトソーシングする例も多い。日本のiモードなどのサービスも一例だと思う。

 その場合のライセンス形態、料金体系だが、トランザクション単位で課金したり、パケット単位で費用をいただいたりするなど、今後2−3年でいろいろなモデルが考案されることだろう。

 コンシューマー向けのソフトも、もっとブロードバンドが一般的になれば、店で買うよりもダウンロードしようということになるかもしれない。

 ただ、そうしたサービスへの移行は急激にではなく、ゆっくりと行われると考えている。それでも、基礎技術はすでに確立されているし、すでに進み始めているのも事実だ。

 5.日本と米国を比較すると、インターネットへの接続料金が基本的に時間単位で課金されていることが問題だと思う。米国では市内電話はほとんど無料と化しているからだ。ただ、iモードやJフォンなどの携帯電話を利用したサービスは日本の方がずっと進んでいる。ワイヤレス系のインフラはかなり統合されているとみている。