CCS特集:2001年春

「土井プロジェクトレポート第5回」

 2001.05.25−経済産業省プロジェクトの「高機能材料設計プラットホームの開発」(通称・土井プロジェクト)は、いよいよ最終年度を迎えてますます開発のピッチをあげている。6月中旬にはプロトタイプのセカンドリリースを行うが、各種の計算エンジンを統合する共通プラットホームの完成度も高まり、システム全体が「OctA」(仮称)と命名された。OctAプロジェクトの最終リリースは来年3月になるが、プロジェクトを率いる名古屋大学の土井正男教授は「中途半端なものにはしない。材料設計のプラットホームとして、シームレスズーミングの可能性をみんなの目にはっきりと示せるシステムをつくり上げる」とあらためて気合を入れている。

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 このプロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から化学技術戦略推進機構(JCII)が委託を受けたかたちで実施されており、参加各企業からフルタイムの研究員が派遣されて、土井教授のもとで集中研究が行われている。原子・分子のミクロ領域と実際の材料特性があらわれるマクロ領域との中間に位置する“メソ領域”のシミュレーション技術を確立し、ミクロ/メソ/マクロ領域をシームレスにズーミングするかのように材料特性を解析・予測できるようにすることが目標となっている。

 最新版のプログラムの出来について土井教授は「メソ領域といっても、扱う時間的・空間的スケールには何ケタもの開きがある。そのようにスケールが違えば、計算モデルも異なるし、データ構造にも相違が出てくる。しかし、今回のプロジェクトを通して、それらを統一的に扱う技術基盤が確立できたと思う。いまは、どんなものが来てもわれわれのプラットホーム上で動かす自信がある」と話す。

 システム全体はOctAと呼ばれ、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)となる共通プラットホームはGOURMETと命名されている。その上で粗視化分子動力学法のCOGNAC、動的平均場法のSUSI、分散構造シミュレーションのMUFFINといったシミュレーションエンジンが動作する仕組みである。

 今回の最新版は、メンバー企業のほかにも、共同研究ができる相手先を選んで提供していきたいという。それには、外部のシミュレーションエンジンをOctA上に集めたいという狙いもある。「実際に使ってOctAの可能性を感じてほしい。プロジェクトでは高分子材料設計をテーマにしてきたが、メソ領域をコントロールして新しい機能を発揮させる点ではナノテクノロジー分野にも応用が可能。電子材料、光材料、生体材料などへの適用も期待している」とも。

 最終年度に関しては、シームレスズーミングの具体的事例を提示できるようにさらに研究を進めるほか、システムを使いやすくするために最後まで開発を続けていく考えだ。