CCS特集:ケムインフォマティクス系

科学技術振興事業団

 2001.05.25−科学技術振興事業団(JST)は、国の予算で開発を進めてきた新材料開発用のデータベース(DB)の正式公開を開始した。高分子DB「PoLyInfo」、合金と無機物質DB「ポーリングファイル」の2種類があり、どちらもインターネットを介して無料で利用できる。将来にわたって定期的にデータを更新し、機能も強化していく予定である。同種のDBは海外にもほとんど例がなく、国際的にも材料開発に貢献するDBサービスとして今後が注目される。

 PoLyInfoは、1930年以降の学術文献から高分子材料設計に必要な各種データを抽出し、相互に関連づけて体系的に整備したもの。約5,000種類のポリマーと候補モノマー、約1万8,000の物性ポイントを蓄積しており、現在はホモポリマーのデータだけだが、10月にはコポリマーのDBも追加する。

 代表的な項目を指定して簡便に検索ができるベーシックサーチと、詳細な検索指定ができるエキスパート向けのアドバンスドサーチの2種類のモードを持ち、ポリマーの部分構造を指定しての絞り込みも可能。

 もう1つのポーリングファイルは、合金と無機化合物の二元系(2種類の元素から構成される材料)の基礎的なファクトデータを網羅したもので、将来的には機械設計を行う際に利用できる拡散や照射、クリープ/疲労、引っ張り/衝撃などの現象におけるデータを集めた「エンジニアリングDB」、スーパーコンピューターの第一原理計算で求めた電子構造情報を集めた「計算物性DB」も合わせて公開していく。

 現在のものは、世界中の専門雑誌1,000誌における1900年以降発表の論文から採択した結晶構造および回折パターンそれぞれ約2万7,000件、物性約4万件、状態図約8,000件のデータを書誌情報とともに収録している。構造マッピングなどの材料設計ツールを備えている点も非常にユニークである。