FQSがMD計算を利用した研究手法を学習するソフトウエアを開発

リチウムイオン電池など具体的例題でノウハウ取得

 2001.04.09−富士通九州システムエンジニアリング(FQS)は、分子動力学法(MD)を利用した実践的な研究手法を短期間で学ぶことのできる教育用ソフトウエア「WinMASPHYCコンサルティングパック」(商品名)を開発、販売を開始した。リチウムイオン二次電池材料の特性評価など、具体的な研究テーマにしたがった形で実際的な使い方のノウハウが得られるのが特徴。価格は、民間企業向けが10万円、大学・教育向けが5万円で、3年間で1,000セットの販売を見込んでいる。

 MD計算は、材料のマクロ物性や分子集合体の拡散・界面形成といった現象の時間的変化をコンピューターでシミュレーションするための手法。計算化学には、分子軌道法や分子力場法などいろいろな方法があるが、MDは学術的にも発展中の計算手法であり、とくに材料設計分野への応用では計算モデルの作成やポテンシャル関数の設定など難しいポイントが多く、研究者は計算対象に合わせた利用ノウハウの修得に多大の時間をかけているのが現状だという。

 今回の製品は、富士通が開発したMDベースの材料設計支援システム「WinMASPHYC Pro」を利用して、その具体的な活用方法を短期間で学ぼうという製品。今回のバージョン1では、リチウムイオン電池の特性予測、溶液分離化学、溶融塩類の特性予測などのテーマを取り上げている。例えば、リチウムイオン電池材料をMD解析して平均自乗変位値を求め、それをもとに電池としての物性を予測したり、臭化リチウムなどの濃厚ハロゲン化物水溶液の構造解析を通じて溶融塩としての物性を予測したりするなど、非常に具体的な例題を扱っている。このため、実際の研究事例を通して、熟練した計算化学者の実践的なノウハウを吸収することができる。

 基本的には、いままで実験でしか得られなかった種類のデータ、それも実験条件が厳しく簡単には実験が行えなかったような分野において、MDシミュレーションをいかに活用するかといったテーマに焦点が当てられているようだ。今後はさらに実例を広げ、金属系材料やクラスターなども取り上げていく。

 利用者は、ウェブブラウザー上に表示されるガイダンスにしたがって、実際にWinMASPHYC Proを操作することによって学ぶ。LAN環境にも対応しており、イントラネット上のウェブサーバーにインストールすれば、社内・学内での教育環境を構築することも容易である。

 教育機関向けにはライセンスパックも用意。10ライセンスで35万円、20ライセンスで60万円、50ライセンスで137万5,000円となっている。また、WinMASPHYC Proとコンサルティングパックとのセット料金は、企業向けが60万円、教育向けは30万円。