日本MDLがNCIのエイズスクリーニングDBを提供開始

ISISユーザーに無償で、4万3,000件の活性データを収録

 2001.04.05−日本MDLインフォメーションシステムズはこのほど、エイズ治療薬の研究に役立つ「AIDSスクリーニングデータベース」の提供を開始した。米国立がん研究所(NCI)が作成したデータをもとにしており、4万3,000種の化合物が登録されている。同社の統合化学情報管理システム「ISIS」のユーザーに無償で提供するもので、強力な三次元構造検索機能を利用することにより、有望な新薬候補化合物の発見に寄与できる。

 今回のデータベース(DB)は、NCIの開発段階治療薬プログラム(DTP、http://dtp.nci.nih.gov/)に基づいて、実際に実験されたスクリーニングデータをDB化したものがベースになっている。もとの情報はNCIのホームページからダウンロードすることが可能だが、それらは実験結果を収めたテキストファイルなどで構成されており、そのままではDBとして扱うことはできない。

 MDLでは、NCIとの契約に基づき、独自に二次元の構造式と三次元構造情報を付加し、ISISで利用できるDB形式に仕上げた。収録されているのはNCIが1999年10月にリリースしたデータ(現時点での最新版)で、実際にテストした4万3,000化合物に対して、EC50(エイズウイルスに侵された細胞を50%正常化する指標)やIC50(正常な細胞の成長を50%阻害する指標)などのデータが収められている。また、スクリーニングの結果としてすべての化合物がCA(活性あり)、CM(やや活性あり)、CI(活性なし)に分類されているのも特徴。

 三次元構造をキーにした検索が可能なので、部分構造から薬効のありそうな化合物を検索し、構造活性相関解析や分子計算を用いてさらに活性の高いファーマコフォアモデルを求めることができる。そのようにして得られた知見をもとにさらにISISで検索にかけることで、手持ちの化合物ライブラリーのなかからポテンシャルの高い新たな候補化合物をみつける可能性が出てくるという。

 今回のAIDSデータベースは、オラクル対応のRCG(リレーショナルケミカルゲートウエイ)形式で提供され、サン・マイクロシステムズのソラリスまたはマイクロソフトのウィンドウズNTをサポートしている。開発に当たって、二次元構造式を三次元構造に変換するため、独モレキュラーネットワークス社の「CORINA」を使用した。これは、エルランゲン大学のヨハン・ガスタイガー教授らが開発したプログラムで、構造式をもとに三次元構造を自動的に生成する機能を持っており、有機から有機金属化合物まで幅広い系に対応することができる。モレキュラーネットワークスは1997年に設立された。

 AIDSデータベースは、CORINAが使用された最初のDB製品で、MDLでは試薬DBの定番である「ACD」など今後の開発にもCORINAを利用していく。また、NCIをソースにしたDBとしては、今回のエイズ治療薬に続き、がん治療薬に的を絞ったDBを開発中だという。