米スポットファイアー:アールバーグCEOインタビュー
医薬・バイオ産業向け統合データマイニングツール
2001.05.29−医薬・バイオテクノロジーなどの研究分野におけるデータマイニングツールの大手ベンダー、米スポットファイアー社が日本法人を設立し、国内における本格的な事業活動を開始した。化学や半導体を含めてプロセス産業全体にターゲットを広げ、その高度なニーズに応えるために製品群を強化。研究開発のステージだけでなく、生産や販売などの幅広い局面にわたる意思決定を支援する「スポットファイアー・デシジョンサイト」として製品体系を拡充した。先ごろ来日したクリストファー・アールバーグCEOに今後の対日戦略などについて聞いた。
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スポットファイアーは1996年に設立されたベンダーで、世界で350社/1万5,000ユーザーが同社のソフトウエアを利用している。社員数は約170名で、本社を米国マサチューセッツ州ボストンに、開発拠点をスウェーデンに置いている。100%出資の日本法人は今年の1月に設立登記をした。
アールバーグCEOは「まだ上場前の企業だが、すでにベンチャーキャピタルから40億ドルの資金が集まってきている」と話す。これは、同社の製品が医薬やバイオなどのライフサイエンス市場で圧倒的な強みを持つためだろう。
近年、コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)やゲノム創薬の技術が導入されるとともに、新薬開発で取り扱うべきデータ量が爆発的に増大している。研究開発がコンカレントになり、開発期間が短くなっているところに、考慮すべきパラメーターはますます増大。人間の頭のなかと手作業で行える範囲をはるかに超えているのが現状だという。
「新薬の候補化合物をみつける探索研究の領域から、前臨床、臨床段階を経て、さらに製造プロセス、あるいは発売後のマーケティングまでそれぞれのステージで大量のデータが発生する。それをどう分析するかが大きな問題となる。とくに今後は、例えば探索研究の段階で前臨床や臨床のデータを判断材料に用いるなど、すべてのデータを統合的にハンドリングできる基盤的なソフトウエア技術に注目が集まると思う」とアールバーグCEO。新しい「デシジョンサイト」は、さまざまな用途に合わせた解析ツールとデータマイニングの計算エンジンを共通基盤上で統合したシステムである。
研究開発分野では、化学および生物学的データ管理の代表的システムベンダーである米MDLインフォメーションシステムズや英IDビジネスソリューションズ、生産分野のプロセス解析やプロセスモニタリング、プロセス最適化などの大手である米アスペンテクノロジーなど、各分野でさまざまなパートナーシップを築いており、いろいろなソフトウエアと連携して幅広くデータを集めてくることができるのも同社の大きな強みである。また、データ分析ではビジュアル化のわかりやすさで定評があり、創薬支援のためのワークフローが整っていることも人気の理由だ。
国内では、日本たばこ産業などすでに30社のユーザーがおり、化学構造を扱えることを武器にHTSデータ解析の分野で実績が高い。アールバーグCEOは「ファイザーやイーライリリー、グラクソ・スミスクライン、ファルマシア、アストラゼネカなどは全社利用契約で数千ユーザーが当社のソフトを使用している。日本でも積極的にこのような提案を行い、システムが広い範囲で活躍できるようにしたい」と述べる。
販売体制は直販のほか、大手システムインテグレーターのシーエーシー(CAC)がパートナーを務めている。