マイクロソフト .NET デベロッパーズコンファレンス基調講演

今夏から開発環境提供開始、独自のウェブサービスHailStormも

 2001.06.01−マイクロソフトの鈴木和典取締役エンタープライズ・セールス/マーケティング部門担当兼デベロッパー・マーケティング本部長は、5月30日に開催された「マイクロソフト・ドットネット・デベロッパーズコンファレンス2001」の基調講演で同社のドットネット(Microsoft .NET)最新戦略を説明した。その中で、鈴木取締役はインターネットが単なるインフラではなく情報システムのプラットホームになり、ソフトウエアはネットワークを介して利用するサービスになると述べ、マイクロソフト自身が提供する「HailStorm」サービスについて説明した。今年の夏から開発環境の提供を開始し、年内にはドットネット型のビジネスモデルを固めるとした。

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 冒頭、鈴木取締役は、マイクロプロセッサーの価格が低下し、十万円を切るサーバーが出現する一方で、インターネットはブロードバンド元年を迎え、新しいビジネスチャンスが開かれていると述べ、ドットネット型システムが普及する基盤が整ってきていることを説明した。

 ドットネットでは、ソフトウエアを利用するプラットホームがウィンドウズ環境からインターネット環境へと変わる。いまのソフトウエアは、インターネットを介して利用するサービスを組み合わせたソリューションに変化する。ドットネットでは、既存のアプリケーションもそうしたサービスの一つとして組み込むことを可能にするという。この「サービス」は、それが動作するハードウエアの種類や物理的な存在場所を意識せず、常に再利用が可能なソフトウエアコンポーネントのことを指す。

 現在ではプラットホームに縛られて孤立しているアプリケーションが、ウェブサービスとして有機的に統合できるのがドットネットの最大の特徴であり、UDDI(ユニバーサル・ディスクリプション・ディスカバリー&インテグレーション)やSOAP(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)、XMLなどがその基盤技術となっている。

 具体的には、サーバーOSの「ドットネット・エンタープライズサーバー」、ウェブサービスの実行環境である「ドットネット・フレームワーク」、開発環境の「ビジュアルスタジオ・ドットネット」などのソフトウエアを用い、その上に各種のウェブサービスを実装する仕組みとなる。

 UDDIを使うと、ネット上ですでに公開されているサービスを探して利用することが可能なので、ソフトウエアの部品化を一層推進することができ、同じような機能の二重開発を避けることができる。鈴木取締役はマイクロソフト自身も「HailStorm」(開発コード名)の名称で基本的なサービスを提供していくと表明した。これには、myProfile、myAdress、myApplicationSettings、myDevices、myDocuments、myFavoriteWebSites、myLocation、myWallet、myNotifications、myCalender、myContacts、myInboxなどがあり、個人がネット上で利用する最も基本的なサービスを集めたものになるという。

 HailStormはすべてXMLで記述されているため、XML対応システムとの間で情報を相互に交換することが可能。個人認証技術としてはマイクロソフトパスポートと呼ばれる技術を利用する。

 「HailStormに関してはエンドユーザーからサービスの使用料をいただきたいと思っている」と鈴木取締役。「基本的には定期購読制のような形で、利用するサービスの種類や頻度によって課金したいが、年内には詳細なビジネスモデルを固めたい」とした。

 同社では、ドットネット対応システムの開発を後押しするため、開発ツールのビジュアルスタジオ・ドットネットのベータ2を今年の夏に、正式版を年内に提供する。ドットネット・フレームワーク日本語版は今年の夏にやはりベータ2が、年内にSDKを提供開始する。HailStormについては今年の10月に詳細な技術情報を公開するが、開発者向けのベータ1は今年末、正式版は来年になるという。また、ウェブ上にテストサイトを提供するほか、ローカルでシミュレーションができる環境も用意すると言明した。