富士通が最新版分子モデリングシステムCAChe5.0を発売

MOPAC2000搭載でたん白質解析能を強化、ドッキングスタディーも

 2001.08.23−富士通は、汎用分子モデリングシステム「CAChe」の最新ウィンドウズ版バージョン5.0を9月30日から発売する。巨大分子の計算が可能な半経験的分子軌道法ソフトMOPAC2000を内蔵し、たん白質の立体構造解析や低分子との相互作用など、新薬開発で必要となる機能を重点的に強化した。ソフト価格は、企業・官庁向けは70万円から、教育機関向けは20万円からで、国内・海外を合わせ2003年3月までに1,000本の販売を見込んでいる。

 最新版のCAChe5.0では、とくにたん白質の解析機能を強化。MOPAC2000のMOZYME法を利用することにより、2万原子までの大規模な分子を扱えるようになった。受容体となるたん白質と医薬分子とのドッキングスタディーが可能になったほか、分子の重ね合わせ機能も強化されている。

 プロテインデータバンク(PDB)ファイルを読み込むことができ、アミノ酸シーケンスを表示して二次構造解析などを行うことが可能。たん白質のホモロジーモデリング機能を持ち、アミノ酸残基を自由に挿入・削除したり、ポイントミューテーションを行ったりすることも容易である。

 また、MOPAC2000のPM3パラメーターよりも生成熱が約4倍高精度なPM5パラメーターを追加した。リチウム、ベリリウム、ホウ酸、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどの新しいパラメーターを内蔵させており、遷移金属としても白銀、鉄、銅、銀に加えて、新たにモリブデン、バナジウム、パラジウムに対応させた。

 その他、Gaussian98の出力ファイルを読み込むことができるようになり、CAChe側で静電ポテンシャルや等電子密度面などのグラフィック表示が可能になった。読み込み可能な情報は、分子構造、全SCFエネルギー、双極子モーメントとそのxyz成分、軌道エネルギー、分子軌道係数、基底関数(f軌道まで)となっている。

 CACheのパッケージはいくつかの種類に分かれており、計算エンジンとしてMOPAC2000、ZINDO、拡張ヒュッケル、分子力学、分子動力学を組み込んだ「Quantum CAChe」(企業・官庁140万円、教育機関40万円)、プロジェクトリーダーを付加した基本パッケージ「CAChe Worksystem」(210万円、60万円)、医薬分野に必要な機能をまとめた「Medicinal CAChe」(175万円、50万円)、密度汎関数法DGaussを標準装備した「ab initio CAChe」(210万円、60万円)、これにプロジェクトリーダーを付加したフル機能版の「CAChe Worksystem Pro」(280万円、80万円)、安定配座の自動探索CONFLEXを中心とした「配座探索CAChe」(120万円、35万円)、さらに入門版の「Personal CAChe」(70万円、20万円)−などがある。

 同社では9月末までPersonal CACheを除く各製品を企業・官庁向けで50%引き、教育機関向けで60%引きで販売する。 CAChe5.0へのアップグレードを合わせても通常価格よりも安く購入できる。

 アップグレード価格は、CAChe Worksystemからが94万5,000円(企業・官庁)と30万円(教育機関)、Quantum CACheからが63万円円と20万円、CAChe Worksystem Proからが120万円と40万円、ab initio CACheからが94万5,000円と30万円、Medicinal CACheからが78万7,000円と25万円、配座探索CACheからが54万円と17万5,000円となっている。