インフォコムが薬物−受容体相互作用解析でスイート製品

創薬に特化した米シュレーディンガーの最新ソフトを発売

 2001.08.24−インフォコムは、たん白質と医薬品分子との相互作用解析に焦点を当てた分子設計支援システム「ファーストディスカバリースイート」(商品名)の販売を開始した。米シュレーディンガー社が開発した製品で、医薬品が作用するターゲットたん白質に医薬分子をドッキングさせ、その分子構造を修飾して最適化させたり、たん白質との結合部位の反応性など詳しい相互作用を解析したりすることができる。最近、ポストゲノムでたん白質の立体構造が次々に解明されつつあるが、同社では次のステージとして薬物とたん白質との相互作用解析の需要が高まると期待して販売攻勢をかけていく。

 「ファーストディスカバリースイート」は、非経験的分子軌道法プログラム「Jaguar」などで有名なシュレーディンガー社の新製品で、アプリケーションを創薬分野に専門特化させた初の製品群となる。たん白質モデリングと分子力学/動力学エンジンを組み込んだ「Impact」、薬物−受容体のドッキング計算を行う「Glide」、構造最適化を行う「Liaison」、薬物−受容体クラスター解析を行う「QSite」、シュレーディンガー社の共通グラフィックソフト「Maestro」から構成されており、米ラトガー大学のロナルド・レヴィー教授らが開発したImpact以外はすべて自社開発の新ソフトウエアである。

 ソフト価格は、ImpactとMaestroを基本に、Glideとの組み合わせで950万円、Liaisonとの組み合わせで850万円、QSite&Jaguarの組み合わせで1,200万円となっている。

 基本的な計算エンジンとしてImpactが利用されるが、この最大の特徴はOPLS力場を搭載していること。生体高分子用と低分子用の二種類の力場をハイブリッド化したもので、薬物(低分子)と受容体たん白質(生体高分子)とのクラスターモデルを精密に計算するのに適している。アミノ酸シーケンスからのたん白質モデリング機能もあり、各種の溶媒モデルもサポートしている。

 Glideは、たん白質と薬物分子のドッキング状態を高速・高精度に探索したり評価したりするソフト。独自の階層的フィルタリング手法により、多数の薬物候補分子のなかからドッキング可能な分子を高速にみつけ出すことができる。ドッキングサイトを選定し、スコアリングによるドッキング評価を行うことで、大量の化合物ライブラリーから効率良くスクリーニングすることが可能。

 Liaisonは、リニアレスポンス法を搭載した薬物−受容体間の結合自由エネルギー計算によって、リードオプティマイゼーションを行う。統計解析手法を盛り込んでいるため計算が高速なことに加えて、分子構造を大きく修飾した場合など一般的な自由エネルギー摂動法では対応が難しかった問題もカバーしているのが特徴。リニアレスポンス法の商用プログラムは初めてで、同社では新時代のオプティマイザーとして強力に売り込んでいきたいという。

 最後のQSiteは、量子力学(QM)と分子力学(MM)のハイブリッドプログラム。Impactで受容体側を、Jaguarで薬物側の分子を解析する。QMとMMの境界部分に“フローズンQM軌道”を定義することで、たん白質と薬物との活性部位を量子化学的に評価することが可能になった。電子構造理論に基づき、活性部位の反応性などを解析することができる。

 このように、各ソフトを統合的に利用することでストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)分野の研究業務を大幅に効率化することが可能になる。

 動作プラットホームは現在はSGI/IRIX版だけだが、Linux版も開発中であり、来年にはリリースされる見通しだという