富士通と富士通研究所がMOPAC2002を開発
溶媒効果を考慮した計算を強化、たん白質の構造・機能解明に威力
2001.11.08−富士通と富士通研究所は7日、半経験的分子軌道法ソフトウエアの最新版「MOPAC2002」(商品名)を開発、販売を開始すると発表した。水などの溶媒効果を考慮したシミュレーションが手軽に行えるようになり、生体内におけるたん白質の立体構造や電子状態を探ることができるなど、ゲノム創薬分野で有用になるとみられる機能性を重点的に強化した。ソフト価格はLinux版が企業・官庁向け60万円、教育機関向け30万円。マルチユーザーライセンスが可能なUNIX版は同様に80万円からと40万円から。2003年3月までに海外も含めて200本の販売を見込んでいる。
MOPACは、半経験的分子軌道法の代名詞的ソフトで、独自のMOZYME法の搭載により、たん白質のような1万原子を超える巨大分子を計算できるという特徴がある。
ポストゲノムや今後のゲノム創薬においても、たん白質の立体構造の解析が焦点になると言われているが、実験的な手法は一旦結晶化させてX線で解析を行う方法が中心であり、実際に生体内でたん白質が働く時は溶媒中に相当する環境となることから、その時の立体構造は結晶構造とは異なっていると考えられ、溶媒中での状態をシミュレーションできる計算的な手法に注目が集まりつつある。
しかし、これまでは電子状態にも着目できる分子軌道法でたん白質を扱うのは不可能であり、これにはじめて対応したMOPACでもいろいろと制約が多いのが現状だったという。
そこで、今回のMOPAC2002では、溶媒中の計算に対応したCOSMO法を改良した“リニアスケーリングCOSMO法”を新たに開発して搭載した。計算時のメモリー使用量を大幅に削減するアルゴリズムを採用しており、これまでは原子数の3乗で増大した必要メモリー量を、原子数に比例するペースに抑えることができる。具体的には、従来は1,000原子を計算するために8ギガバイトのメモリーが必要だったが、新手法では数10メガバイトで計算を実行することが可能。結果的に、メモリーの物理的制約で計算が困難だった巨大分子の解析が、少ないメモリーの現実的な環境でも行えるようになったという。
また、分子の生成熱の計算でPM3の1.7倍の計算精度を持つPM5を新たにサポートしたほか、AM1のパラメーターの追加、MOS-F5.0のRPA法による励起状態計算機能の追加などの機能強化が図られている。
プラットホームとしては、Linuxのほか、Tru64 UNIX、ソラリス、IRIX、HP-UX、AIXをサポートしており、パラレルバージョンも用意されている。パラレル版の価格は4プロセッサーまでが企業・官庁向け280万円、教育機関向け140万円、8プロセッサーまでが400万円と200万円、9プロセッサー以上は700万円と350万円となっている。