米IBMがローレンス・リバモア研と世界最速スーパーコンプロジェクト

2005年に200TFLOPS、たん白質の折り畳みなど大規模問題に適用

 2001.11.13−米IBMは、米エネルギー省(DOE)の国家核安全保障管理局(NNSA)と世界最高速のスーパーコンピューター開発で提携した。1999年12月に発表された「ブルージーンプロジェクト」を大規模に拡大したもので、NNSA管轄下のローレンス・リバモア国立研究所との共同開発により、2005年に200テラFLOPS(毎秒200兆回の浮動小数点演算を実行)の処理能力を持つ「Blue Gene / L」(ブルージーン/L)を完成させる。このマシンは、たん白質の折り畳みなどの立体構造解析に大きな貢献をするとみられており、IBMではこのマシンの商用化にも積極的に取り組む計画。

 Blue Gene / Lは、既存の最速スーパーコンピューターの15倍の速度、15倍の電力効率と50分の1の設置スペースを実現する。IBMリサーチが提唱している自己治癒力や自己管理能力、自己構成力を備えた“オートノミックコンピューティング”(自律的コンピューティング)の具体化という位置付けでも開発が進められる。

 Blue Gene / Lが目指す200テラFLOPSは、現時点のトップ500台のスーパーコンピューターの総演算能力を超えており、科学シミュレーションの世界に大きな可能性と革新をもたらすものとして期待されるという。最終的には、ブルージーンプロジェクトのゴールである1ペタFLOPS(同1,000兆回の演算)を目指していく。

 アーキテクチャーとしては、演算用と通信用のプロセッサーが一チップ化されており、さらにプロセッサー自身がオンボードでデータチップセルを搭載していることが最大の特徴。メモリーへのデータアクセスのボトルネックを大幅に改善できるため、とくにデータ集約型アプリケーションの処理能力を飛躍的に高めることが可能になる。

 具体的には、ポストゲノムのたん白質解析分野のほか、物質の経年変化や材料特性のモデリング、発火や燃焼・爆発現象のシミュレーション、乱流のモデリングなど、複雑な物理化学的現象を解明することに役立てていく。

 IBMでは、Blue Gene / Lはアプリケーションの移植性、消費電力やコスト、スペースなどの要件からみて、商用化向きのプロジェクトだとしており、パートナーとのアライアンスなどを通して積極的に製品化を進めていく計画である。

 なお、同じDOE傘下のサンディア国立研究所とコンパックコンピュータ、セレーラジェノミクスも100テラFLOPSのスーパーコンピューターを2004年に実現する「レッドストームプロジェクト」を今年のはじめから進めている。やはりペタFLOPSへの到達を最終目標としているが、こちらにはセレーラが入っていることからも明らかなように、たん白質の機能解析のアプリケーションを明確なターゲットに位置付けている。

 コンパックのアルファプロセッサーの次世代技術をベースにし、1チップ上に演算器だけでなくシステムロジックも組み込む。メモリーもオンチップで搭載するなど、今回のBlue Gene / Lと似通った面もあるようだ。レッドストームは、最近米国で行われたスーパーコンピューター展示会でデモ機が展示された模様。