独ライオンがゲノム創薬支援で米IBMと戦略的提携

SRSとDiscoverlyLinkのデータ統合環境を連結

 2001.12.21−バイオインフォマティクスの最大手ベンダーである独ライオンバイオサイエンスは、ゲノム創薬支援で米IBMと戦略提携を結んだ。強力なIT(情報技術)プラットホーム上でのデータ解析、データ管理、データインテグレーションを通し、ヒトゲノムなどの大量のデータを利用する“ゲノム創薬”をはじめとする新しい病気治療法の開発に寄与することが目的。両社の技術を統合した包括的ソリューションを製薬会社などに提供していく。当面の提携期間は2年間で、以後は1年ずつ延長される。

 ライオンとの提携は、昨年8月から専門部隊を組織してライフサイエンス分野に取り組んでいるIBMにとって大きな意味がある。IBM自体はバイオインフォマティクスのソフトウエア事業そのものには手を染めておらず、ソフト面はパートナー戦略が基本となるためだ。

 また、バイオインフォマティクスの大量データベース(DB)アプリケーションでは、コンピューターのハードウエアへのチューニングや最適化が重要になる場合が多いため、ライオンにとってもIBMのハードウエア/ミドルウエアの専門サポートを活用できるようになったメリットは大きい。既存のIBMユーザーへのアプローチといった営業面の要素も考えられる。

 とくに、今回の提携では、共同でのマーケティング、コンサルティング、カスタマイズ、技術サポートなどを推進していくことに加え、それぞれの技術や製品を補完的に統合した新しいソリューション構築を進めることが注目される。

 具体的には、ライオンのバイオインフォマティクスのプラットホーム製品である「SRS」とIBMのデータインテグレーションソフトである「DiscoverlyLink」(ディスカバリーリンク)を相互に組み合わせることにより、遺伝子/たん白質に関するあらゆる情報と知識を一元的に管理しアクセスできるようにしていく。

 SRSは、世界中に分散したバイオ関連の各種DBを1つのインターフェースで束ねて扱うことができるようにするもので、この分野のリーダー的な製品だといわれている。多様なDBにアクセスするバイオ研究には不可欠な機能であり、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)のオラクル上で利用されるケースがほとんどだったと思われる。一方のDiscoverlyLinkもライフサイエンス分野の多様な情報を統合するための製品で、IBMのRDBMS製品である「DB2」上で動作する。

 SRSとDiscoverlyLinkとの統合により、それぞれの情報資産を相互に連携利用し合うことが可能になる。また、それらのDBを利用する解析ソフト群にもそれぞれ他方へのデータアクセスの道が開かれる。ただし、SRSとDiscoverlyLinkはあくまでも補完し合う関係で、今後も両社はそれぞれに製品開発を継続していくとしている。

 ライオンは、独自に新薬開発研究を行っているハイデルベルクの拠点内に統合ソリューションのモデルシステムを構築し利用していく。まずはIBMのハードウエア上で実現するが、他社製マシンへもサポートを広げる予定があるという。