NECソフトが農業生物資源研究所と共同研究契約
たん白質構造・機能解明を高速化、事業化まで視野
2001.11.20−NECソフト(関隆明社長)は19日、農業生物資源研究所とたん白質の構造解析・機能予測に関する共同研究契約を結んだと発表した。生物研が民間企業と正式に共同研究をするのは今回が初めて。2005年3月までにかけて、たん白質構造解析技術の改良および産業利用への応用展開を進めていく。
今回の共同研究の目的は、生物研が持つX線結晶解析などの実験系バイオ技術と、NECソフトが得意とするIT(情報技術)系バイオインフォマティクス技術との相互補完により、ポストゲノムで注目されるたん白質の構造や機能に関する予測技術を産業レベルで確立しようというもの。
NECソフトは、今年の4月に「VALWAYテクノロジーセンター」を開設し、バイオIT分野の事業化に向けた研究開発を推進している。NECの研究所と長年の共同研究の実績を生かし、とくにたん白質の構造や機能の解明を焦点とした領域での事業化を狙っている。ただ、同社には実験的なアプローチに関する経験がなかったため、早期事業化を目指すうえで、実験系の技術に優れた生物研と提携した価値は非常に大きいといえそうだ。
具体的には、生物研の生体高分子研究グループとの共同研究のスタイルを取り、生物研側から実験系の研究員5名、NECソフトから実験系とIT系の研究員5名の10名体制で集中研究を行う。研究拠点は生物研のなかに置かれる。
たん白質の立体構造はX線結晶回折で得られるデータを処理することによって求められるが、共同研究グループではデータ解析から構造決定にいたる技術開発・改良を進め、十分に成長していない小さな結晶でも精度良く立体構造を得るようにする技術などを確立していく。これにより、新規たん白質の構造解明の期間とコストを大幅に短縮することができる。
また、cDNAの培養からたん白質の合成、精製、結晶化、X線解析までの一連の工程のスループットを向上させる技術開発を行い、NECソフトによる受託解析・研究支援サービスなどの形での事業化の可能性を探っていく。研究の中では、たん白質精製技術へのナノテクノロジーの応用、たん白質の結晶化を自動化するロボット技術といった未来的なテーマにも取り組んでいく予定。