デルコンピュータ:ケビン・ロリンズ社長兼COOが会見

IT不況下でひとり勝ち、需要回復は来年春から夏

 2001.10.30−デルコンピュータのケビン・ロリンズ社長兼COO(最高執行責任者)が29日、都内で記者会見し、世界的なIT(情報技術)不況でパソコン市場全体が落ち込むなか、順調にひとり勝ちを続ける経営状況などについて明らかにした。「デルのビジネスモデルは市場の成長期だけでなく、後退期にも回復期にも、どんな経済サイクルにも対応できるのが強みだ。下半期の日本のパソコン市場は21%ダウンとみているが、それでもデルは伸びるだろう」と絶対の自信をみせた。また、ロリンズ社長は米国を中心とするIT需要の回復に関して、来年の春から夏の早い段階には底を打って回復に転じるとの見方を示した。

 ロリンズ社長は会見の冒頭で、ここ10年以上、景気変動と関係なく常に伸び続けてきたIT需要が低迷する異常事態を迎えていることを認めたうえで、やはりITが経済の牽引力であり、来年の春から夏にかけての比較的に早い時期に市場は回復をみせると述べた。

 ただ、不況下でもデルだけは好調を持続しており、「同時多発テロが発生した9月以降も順調で、米国の法人向け市場で40%シェアを持っている。今年の第1四半期にはパソコン市場での世界シェアがトップになり、第2四半期ではさらに2位との差を広げた。また、サーバー市場でも米国でトップシェア、世界11ヵ国で1位か2位という実績を築いている。ノート市場でも今年の第2四半期に世界トップになった。さらに、サービス事業が急成長している。今年はこれまでのところ34%アップで、全売り上げの10%を占める勢いだ。これはDTC(デル・テクノロジー・コンサルティング)と呼んでおり、日本でもこの10ヵ月間で170件の実績があがっている」と述べ、ますます勢いを増していることを強調した。

 「売り上げが伸びているだけでなく、利益が拡大していることがポイントだ。市場シェアの伸びと利益の伸びをグラフにしてみると、他のパソコンメーカーと比べてデルが著しく優れていることが明白になる」とロリンズ社長。インターネットを活用して、顧客や社員、取引先と良い関係を築いていることが不況下でも成長できる理由だとした。徹底的なサプライチェーン管理により、取引先の部品メーカーの生産体制とデルの生産体制が効率よく結びついており、部品在庫が4日分という圧倒的な低コスト構造を実現している。

 「例えば、同時多発テロの際は、4日分の在庫で週末まで生産を続行し、翌週には航空機が動いて新しい部品が入るようになった。欧州やマレーシア、中国の工場はまったく影響なく操業して、一部の製品を米国に空輸することにより、当社のビジネスにはテロもほとんど影響がなかったといえる。バリューチェーンが確立されサプライヤーとの関係がしっかりしているので、特定の地域で問題があっても柔軟に対応ができることがはっきりした」。また、直販主体で顧客の情報を把握しているので、どの顧客に被害があったかもすぐにわかり、迅速な対応を取ることができたという。

 一方、ウィンドウズXP発売のインパクトに関して、経済環境が悪いために本来期待された爆発的な影響力はみられていないとしながら、「デルのコンシューマーユーザーには最先端技術に敏感な人が多いので、当社としてはすでに良い影響が出てきている。企業ユーザーに関しては、来年の春から夏にかけて西暦2000年問題のときの駆け込み需要で購入したマシンがちょうど3年目の更新期を迎えるので、このタイミングで移行が進み、ぐっと伸びてくるとみている」とした。

 日本市場に関しては、「サーバー市場で2位になるなど、企業向けビジネスの伸びに満足している。日本でのシェアはビジネス向けでとくに高く、ワークステーションで30%、サーバーで15%近い。またDTCについても米国ほどではないにせよ順調に立ち上がっており、今年は日本の売り上げ全体のなかでサービス製品が13%を占める予定だ。これはハードウエア事業の2倍の伸びを実現することに相当する」と強調した。