米マイクロソフト:リチャード・ベルーゾー社長兼COO
パソコン全面依存から四本柱戦略へ転換、ドットネットを基盤に成長
2001.12.14−米マイクロソフトのリチャード・ベルーゾー社長兼COOが13日、都内で記者会見し、パソコンへの全面依存から脱却する新たな“四本柱”戦略について語った。インターネットを情報システムのインフラとする「Microsoft .NET(ドットネット)」をベースに、企業向けサーバー事業やコンシューマー事業を多角的に展開していくビジョンを示した。
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会見の冒頭でベルーゾー社長は、IT(情報技術)産業はここ数年の成長と落胆のときを経て、新しい技術をベースとした新たな成長期へのとば口にあるとし、マイクロソフト自身も変革のときを迎えていると述べた。
具体的には、パソコン全面依存を脱却し、四本柱による成長戦略を目指す。「ただ、パソコンは常に技術の中核に位置するデバイスであり、魅力を高めて再活性化させる必要がある。このため、WindowsXPとOfficeXPを投入し、業界全体と協力してパソコン需要を盛り上げたい。これが第1の柱になる。第2は、企業向けサーバー製品の分野で、いま最も成長率が高い。とくにパートナー連携を強化し、ドットネットをベースとした優れたソリューションを提供できるようにしていく。3番目はXboxに代表されるコンシューマービジネスだ。モバイル機器への取り組みを含めて力を入れる。第4はこれらのシステムをつくり上げるための開発環境を提供するビジネスである」と説明した。
とくに、ドットネットに関しては、「まず明確なビジョンを打ち出すことが重要だと考えた。コンシューマーからエンタープライズまでのすべてのシステムを包含できる壮大なビジョンだ。そのうえで、実現可能な開発環境のステップを与えることが必要だ。来年前半にはVisual Studio .NET、Windows .NET Serverなどを利用し、SOAPやUDDIを実際に利用したウェブサービスを開発することが可能になる。投資回収が早くできないと市場はついてこないので、ドットネットの早期普及を目指していく」とした。
ウェブサービスの個人認証に関し、マイクロソフトの“パスポート”に対抗するベンダーが立ち上げた“リバティーアライアンス”に対しては、「インターネット上でサイトからサイトへ、サービスからサービスへと移動する際に、シングルサインインを可能とする優れた認証技術が必要になる。当社のパスポートはこの面で非常に効率の良い体験をユーザーに与えることができ、実際に大きな進捗がみられて、対応するパートナーも増えている。これに反対しているのがリバティーアライアンス陣営だが、彼らがこのような動きを起こした主旨・主張、具体的な技術・製品、提供できる機能など、私としてもぜひ理解をしたいと思っている。そのうえでビジョンが同じであれば一致できる点があるかもしれないが、いまはそれらを慎重に評価中だ。当社としては、今後ともパスポートを推し進める戦略に変わりはない」とコメントした。
日本で来年2月22日に発売されるゲーム機のXboxに関しては、「最も優れたゲーム体験を提供しようというのがXboxの開発コンセプトだ。そのために音声や画像の性能、ハードディスクの搭載、ネットワーク機能の装備などの高い基本機能を持たせた。さらに、ゲームメーカーとの緊密な連携も進めている。将来にさまざまな付加価値を追加できる発展性も考慮に入れており、腰を据えて日本市場に取り組みたい。四本柱の重要な一つとして必ず成功させる」と述べた。
また、米国IT産業の回復の見通しについては、「IT産業が苦戦しているのは事実だ。過剰な投資の反動としての自制の時代、一種の調整期となっている。こうした調整期間は1年は続く。実際、ちょうど1年前には顧客はかなり投資に慎重になっていた。しかし、最近になってようやく前向きな姿勢がみられるように思う。来年の前半には、やや物足りないながらも業界全体が上向きになってくるだろう。夏ごろになると、業界各社も自信を取り戻すのではないか。そのタイミングで本格的な回復期に入ると思う。ただ、IT産業のリーダーとして、当社は常にポジティブな姿勢を保ちたい」と見解を述べた。