シミュレーション・テクノロジーが次世代型ダイナミックシミュレーター
英PSE社のgPROMS、多次元分散系/不連続系の最適化運転が可能に
2001.10.16−プロセス産業向けの専門ソフトウエアベンダーであるシミュレーション・テクノロジー(本社・横浜市金沢区、田中耕太郎社長)は、化学プロセスの動的な挙動を予測できるダイナミックシミュレーターの次世代型製品「gPROMS」(商品名)の販売を開始した。これまでのソフトでは対応できなかった不連続系・多次元分散系のプロセス現象を容易に取り扱うことができるほか、プラント全体を常に最適化された状態で動かすオンライン最適化運転を高精度に実現することが可能。とくに、ファインケミカルなどの多品種少量生産型バッチプロセス、グレード切り替えが頻繁なポリマープロセスなどの最適化運転にも初めて対応しており、国内でも大きな反響が予想される。
gPROMSは、ダイナミックシミュレーターの代名詞的存在ともいわれるSPEEDUPの後継システムとして英インペリアル大学のCPSE(プロセスシステムエンジニアリングセンター)で開発された。1997年に同大学から独立した英プロセスシステムズエンタープライズ社(略称・PSE、マーク・マツォポラス社長)によって商用化され、すでに欧州の大手化学企業などを中心に豊富な実績がある。
現実の複雑な現象やプロセスを厳密な物理原則に従って精密にモデル化することにより、シミュレーションの精度を新しい段階にまで高めている。定常から非定常、平衡から非平衡、連続系から不連続系、一次元集合系から多次元分散系までを一貫して扱うことができるという意味で、次世代型のシミュレーターと呼ぶことができるのだという。
プロセスシミュレーターは、複雑なプロセスの最適条件やプロセス制御の最適点をシミュレーションで割り出すためのソフトで、その適用範囲は設計段階から運転段階にまで広がっている。とくに、最近では実際の運転データをもとにシミュレーションを行って、その結果をリアルタイムに制御につなげる“オンライン最適化運転”が注目されてきた。しかし、単に運転条件を最適化すればいい連続プロセスと異なり、運転手順の変更などをともなうバッチプロセスには適用することが難しかった。
gPROMSはダイナミックシミュレーターをベースにした厳密数学モデルを用いた動的最適化が行えるのが特徴。CVP(コントロール・ベクター・パラメタリゼーション)と呼ばれる手法により、ダイナミックモデル上に最適化の条件式を追加するだけで多変数に対する正確な最適点を直接求めることができるという。バッチプロセスにおいては、運転条件や運転手順の最適化に加え、反応器のサイズや蒸留塔の段数といった装置設計の最適化にも利用可能。
データの整合化(データリコンシリエーション)の問題も、これまでのオンライン最適化ではプラントが定常状態に移行するのを待って整合性をとる必要があったが、gPROMSではいつでも動的に整合性をとることができる。随時、現実のプロセスデータに基づいてモデルを最適化し、プロセス全体の動的最適化につなげることができるので、本当の意味での最適化運転が可能になる。
gPROMS自体は方程式解法型のシミュレーターだが、プロセスの物理・化学的挙動を記述するMODEL言語とプロセスの運転条件・手順を表現するTASK言語を組み合わせてプロセスモデルを構築する仕組み。このため、従来のダイナミックシミュレーターでは対応できなかった複雑な系を容易にモデル化しシミュレーションすることができる。例えば、反応器やタンクがいっぱいになったり、圧力限界に達して緊急遮断がかかったり、耐圧限界を越えて容器が破裂してしまったりするなどの不連続現象もそのまま処理することができる。
ただ、方程式型のシミュレーターなので、シーケンシャルモジュール型の定常シミュレーターのようにグラフィカルな形で簡単にモデリング/シミュレーションなどの操作ができるようにはなっていない。現時点では、使いこなすには専門的な技術が必要であり、シミュレーション・テクノロジーではそうしたコンサルティングや技術サポートも含めてサービスを行っていく。
そのほか、ソフトウエアがオープンアーキテクチャーで開発されていることも特徴で、CORBA標準をサポートすることによってネットワーク環境で他のシステムと協調動作することが可能となっている。他社の代表的なプロセスシミュレーターともモデルの互換性がある。
システムはウィンドウズ環境で動作し、ソフトウエアのライセンス料金は年間使用料で200−300万円。