サン・マイクロがウェブサービスのシステム体系SunONEを発表
Javaを重視、個人認証は“リバティー・アライアンス”推進
2001.11.1−サン・マイクロシステムズは30日、インターネットを介したウェブサービスを実現するためのシステム体系“SunONE”の概要を発表した。マイクロソフトが推進しているドットネット(Microsoft .NET)に対抗するもので、目指すところやサービスを構成する要素技術はほとんど共通だが、マイクロソフトが採用していないJavaをベースにしていることと、マイクロソフトの認証技術「パスポート」を受け入れていないことが両者の対立点となっている。マーク・トリバー執行副社長兼iPlanet社長は「SunONEだけが真にオープンで統合できるウェブサービスを提供できる。認証に関してはマイクロソフトの単独支配を許さない“リバティー・アライアンス・プロジェクト”を推進していく」と言明した。
SunONEは、XMLウェブサービスを利用した“サービスオンデマンド”を実現するビジョンを具体化するもので、その中身はマイクロソフトのドットネットとほとんど同じである。トリバー副社長は「例えば、航空券を予約すると、システムがその旅行日程をあなたのスケジュールに追加しますと聞いてくる。それを承認すると、私の個人カレンダーにそれが自動的に反映される。その背後で働くのがウェブサービスである」と説明する。こうした説明自体もマイクロソフトとそっくりだ。
実際、SunONEを構成するアーキテクチャーは、Java、XML(エクステンシブル・マークアップ・ランゲージ)、SOAP(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)、UDDI(ユニバーサル・ディスクリプション・ディスカバリー&インテグレーション)などであり、ドットネットがJavaの代わりにCOMを使うことを除けば基盤技術は共通である。
トリバー副社長は「企業が強固な関係を形づくるべきコミュニティには顧客と取引先と社員が含まれる。自社にとって大切なコミュニティをいかにつくり上げるかが最も重要な点だ」と強調、「コミュニティの成員に対して高度にパーソナル化された情報・サービスをウェブサービスの形で提供することで、コスト削減と収益向上を達成することができる」とした。
個々のウェブサービスを駆動させるアプリケーションサーバー、レガシーシステムをウェブサービスに統合するためのインテグレーションサーバー、ウェブサービスの住所録を管理するディレクトリーサーバー、情報の窓口となるポータルサーバーなどの製品群をiPlanetのブランドでそろえている。また、ウェブサーバーもセキュリティやスケーラビリティに優れたものを選ぶべきであるとし、最近セキュリティホールが攻撃の的になることが多いマイクロソフト製品を暗に批判した。
さらに今回、同社はウェブサービスの開発環境として「SunONEスターターキット」の無償配布を開始。このなかには、ウェブサービスの開発ツールである「Forte」が含まれている。さらにiPlanetの各種サーバー製品とJava2スタンダードエディション1.3.1、Java2エンタープライズエディション(J2EE)1.3なども合わせて提供される。
また、新たに「JAX Pack」を準備していることも明らかにした。これは、Javaプラットホーム上でXMLベースのウェブサービスを実現するためのツール群で、J2EEの環境にXMLとSOAPを対応させる“JAXM”、UDDIとXMLのインターフェースを記述する“JAXR”、スタイルシートを使ってXMLにデータ変換するための“JAXP”、SOAPを使って同期メッセージングを行うための“JAX-RPC”から構成される。現在、25社以上のソフトベンダーの協力で仕様が固められており、来年にJ2EE1.4として公開される予定。
サンの考えるタイムスケジュールとしては、年内にウェブサービスのプラットホームと開発環境を提供し、来年にはForte4.0、JAX Pack、Solaris9、J2EE1.4、さらにUDDIと統合した“リバティー”ディレクトリー技術をもって、個々のウェブサービスを具体的に実装しサービスを開始する段階に入っていく。2003年にはパブリックな形でのUDDIが運営されるようになり、ウェブサービスの統合と連携が世界レベルで進展するということだ。
このようなウェブサービスが広がるという見方は業界主要各社の一致した見解だといえるが、問題はマイクロソフトとサン陣営の対立の構図がここでもみられることだろう。とくに、Javaの扱いとサービスを利用する際の個人認証技術の2つが争点であることが鮮明になってきた。
マイクロソフトはウィンドウズXPからJavaを外すなど、Java抜きでドットネットを実現する方針。それに対してサンのSunONEはあくまでもJavaを中心に据えている。トリバー副社長は「本当にオープンなのはJavaを採用するSunONEである。ドットネットはウェブサービスを統合することはできるが、ユーザーにベンダーを選択する自由を与えない。SunONEならサービスを統合できるし、好みでベンダーを入れ換えることもできる」と強調する。
第2の対立点は、マイクロソフトの認証技術「パスポート」に対する反発だ。一旦、パスポートで認証されれば、利用者は複数のウェブサービスの間をスムーズに行き来することができ、いちいちIDやパスワードを求められる煩わしさから解放される。しかし、トリバー副社長は「パスポートは単一のデータベースで個人認証を行おうというものだ。認証を一括してマイクロソフトが握ることになる。これは、企業が苦労して築き上げてきた顧客あるいはコミュニティとの1対1の貴重な関係を失うことを意味する。こんなことを許すわけにはいかない」と力説。サンが中心になって立ち上げた“リバティー・アライアンス・プロジェクト”を紹介した。
「これは、いわば連合化された認証であり、企業は自社のコミュニティとの1対1の関係を維持できる。同時に、その情報の共有を許すならば、他社がそれを利用することもできる」と説明。技術的な問題はクリアされており、むしろメンバー間でどんなポリシーを定めていくかが重要になると論じた。“リバティー”の現在の参加メンバーは35社だが、2,000社からの問い合わせがきているという。来年の早い時期に仕様を公開し、いろいろな企業がそれを利用し、自社のサービスに実装できるようにしていく。
マイクロソフトのドットネットとサンのSunONEのどちらが主流派になるかは最終的には市場が決めることになるだろう。ただ、いまのままでいくと、それぞれの技術に基づくウェブサービスが別々にスタートすることになりそうだ。その意味では、両者の勢力争いはまさにこれから本番を迎えることになる。