米アクセルリスがライフサイエンス分野でIBMと包括提携

推奨ハードウエアとしてIBMを選定、統合創薬支援環境を提供へ

 2002.01.16−コンピューターケミストリーシステム(CCS)の最大手ベンダーである米アクセルリスは、IBMとの間でライフサイエンス系CCSに関する包括的提携を結んだ。バイオインフォマティクス分野を含む新薬開発のための総合システムとして開発中の「Discovery Studio」(ディスカバリースタジオ)をIBMのハードウエア上に移植し、市場に対して共同でマーケティングやコンサルティング、導入サービスなどを提供していく。実際には、IBMマシンがアクセルリスのライフサイエンスソリューションの推奨環境になるという意味合いがあり、IBMにとってもかなり重要な戦略提携になるといえそうだ。

 現在、アクセルリスは大規模な製品体系の刷新計画を進めており、マテリアルサイエンス分野は「Material Studio」(マテリアルスタジオ)、ライフサイエンス分野は「Discovery Studio」という形で製品群がまとめられつつある。Discovery Studioは今年から具体的な製品がリリースされはじめる予定で、遺伝子解析などのバイオインフォマティクス分野の旧ジェネティックコンピューターグループ(GCG)製品、旧モレキュラーシミュレーションズ(MSI)の「Insight II」で提供されているたん白質のモデリングシステム、同じく旧MSI系の大規模ゲノム解析システム「GeneAtlas/AtlasStore」などを統合。新薬ターゲットとなる遺伝子やたん白質の絞り込みから、立体構造のモデリングとそれに合わせた薬物分子設計、さらには前臨床試験や薬物動態解析につながる領域まで、新薬の研究開発を総合的に支援するシステム開発を目指している。

 今回のIBMとの契約期間は4年間で、アクセルリスはIBMの「PartnerWorld for Developers Program」のプレミアパートナーとなり、全世界にわたって販売・教育・トレーニング・技術サポートの支援をIBMから受けることになる。また、AIXベースのeサーバーp690、LinuxおよびWindowsNT環境のeサーバーxシリーズ、LinuxベースのクラスターシステムであるeサーバーCluster1300などのハードウエアを貸与されて社内で使用し、ソフトウエアの移植や最適化作業を行っていく。

 また、もともとDiscovery Studioではリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)のプラットホームとしてオラクルを採用しているが、今回の提携のもとにIBMのRDBMS製品であるDB2を利用したデータ統合技術「DiscoveryLink」(ディスカバリーリンク)も取り込んでいく計画である。これは、ライフサイエンス分野の研究開発で利用するさまざまなデータを統合するためのソフトで、IBMは昨年末にバイオインフォマティクスの専門ベンダーである独ライオンバイオサイエンスとの間でもDiscoveryLinkを統合する契約を結んでいる。現時点では、バイオインフォマティクス市場でのデータベースプラットホームはオラクルのOracle8i/9iの採用事例が多いとみられるが、これらの提携によってIBMのDB2の勢力もかなり拡大する可能性があるだろう。

 アクセルリスは、バイオインフォマティクス市場で2000年夏以来サン・マイクロシステムズとも提携しているが、こちらはGeneAtlas/AtlasStore、SeqFold、CHARMMなどの一部のサーバー製品をサンのハードウエア上で提供することを目標としたもの。その意味で、サーバー製品とクライアント製品の両方を含むDiscovery Studio全体の推奨ハードウエアをIBMマシンとする今回の提携は、より包括的なものと位置づけることができる。