米アップルがジェネンテックと共同で改良型BLASTを開発

Power Mac G4への最適化で5倍の高速化、オープンソースとして公開

 2002.02.15−米アップルコンピュータは、バイオインフォマティクス市場に本格的に進出した。ゲノム創薬分野のバイオ技術企業である米ジェネンテックおよびスタンフォード大学と共同で、遺伝子のホモロジー検索を高速で行う新しいソフトウエアを開発、オープンソースとして広く無償提供を開始した。この分野で多用される「BLAST」のアルゴリズムを改良し、最新のマッキントッシュに最適化したもので、標準のBLASTの5倍以上の高速処理を実現している。

 BLASTのオリジナルは米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)で開発されている。遺伝子の塩基配列の相同性を解析するための標準的なソフトで、ゲノム研究のための最も基本的なツールとして世界中の研究機関で利用されている。生物の全ゲノムが次々に解明され、ゲノムデータベースが急激にふくれあがりつつあるなかで、いかにBLASTを高速に精度良く走らせるかが、ハードウエアベンダーにとっての最大のターゲットとなっている。

 今回、アップルのアドバンスドコンピューテーショングループ(ACG)は、NCBIの協力のもとでジェネンテックおよびスタンフォード大学遺伝子学科と共同で改良型のBLASTを開発した。ソフトウエアは「Apple/Genentech BLAST」と呼ばれ、1GHzのPowerPC G4プロセッサーを2個搭載したPower Mac G4上で稼働する時、2GHzのペンティアム4プロセッサーを搭載したシステム上での標準型BLASTと比べて5倍以上の性能を発揮したという。

 とくに、Mac OS Xのもとでクロックサイクル当たり複数の浮動小数点演算を実行できるG4独自の“Velocity Engine”(ベロシティエンジン)に最適化されており、その15ギガFLOPS(毎秒150億回の浮動小数点演算を実行)の処理性能がゲノムやたん白質の膨大な配列情報を迅速に解析することを可能にした。

 Apple/Genentech BLASTのソースコードおよび実行モジュールは次のサイト(http://developer.apple.com/hardware/ve/acgresearch.html)からダウンロードできる。アップルでは引き続きNCBIと技術提携し、継続的な開発を進めていく考えだ。バイオインフォマティクス市場におけるアップルのシェア向上に少なからず貢献すると期待される。