アクセルリスが材料設計支援システムMaterials Studioの最新版

VAMPとDPDを追加し計算エンジンが充実、Linuxクラスターにも対応

 2002.05.28−コンピューターケミストリーシステム(CCS)最大手の日本法人、アクセルリス(本社・東京都中央区、角田礼昭社長)は、材料設計支援システムの最新版「Materials Studio 2.1」(マテリアルスタジオ)を発売した。半経験的分子軌道法の「VAMP」と粗視化分子動力学法の「DPD」という2種類の計算エンジンが追加されており、ポリマー設計や結晶設計、化学反応解析など幅広いアプリケーションに利用することができる。ウィンドウズパソコンで動作可能で、ソフト価格は180万円から。

 Materials Studioは、これまでの汎用分子動力学法ソフト「DISCOVER」、密度汎関数法ソフト「DMol3」、第一原理量子力学ソフト「CASTEP」に加え、今回のバージョン2.1で2つのソフトを加えることにより計算エンジンが大きく充実した。これらは、UNIX版CCSとして実績豊富な旧「CERIUS2」からの移植であるが、古いプログラムを単に乗せ換えたのではなく、最新のコードを搭載しているため以前のものよりも高機能が実現されているという。

 とくに、DMol3とCASTEPは今回からLinuxクラスターに対応した。この2本はとりわけ大きな計算パワーを要求するため、サーバーに安価で高性能なLinuxクラスターが利用できることは多くのユーザーから歓迎されそうだ。

 一方、新たにサポートされたVAMPは、有機・無機分子に対応できる半経験的分子軌道法ソフト。分子構造の最適化や電子状態の解析、遷移状態の探索・解析、溶媒効果の導入などの一般的な機能に加えて、電子スピン共鳴(ESR)における水素の超微細結合定数と核磁気共鳴(NMR)における13C化学シフトの両方を予測できる唯一のソフトとして知られている。計算できる原子数が無制限なのも特徴。

 VAMP単体の価格は180万円だが、半経験ソフトとして最も普及している富士通のMOPACを明確に意識しており、発売に合わせキャンペーンを展開して乗り換えを促していく作戦。定価の7−8割引きで提供する予定だという。

 次のDPDは、マテリアルスタジオとして初のメソスケールシミュレーターと位置づけられる。分子をバネでつながれたビーズに見立て、そのビーズ粒子の動きを運動方程式に基づいて計算する。懸濁液、水性乳化剤、ポリマー融解物などの複雑な流体の挙動をメソスケールでシミュレーション可能。物質の界面などの計算を得意とするようだ。こちらの価格は450万円となっている。

 また、今年の10月にはバージョン2.2のリリースが予定されており、新たなメソスケールシミュレーターである「Mesodyn」が追加される。これも計算理論は粗視化分子動力学法に基づいているが、対象がやや異なっており、高分子ゲルなどの扱いが可能になる。