アダムネットが米メタフォリックスのたん白質ドッキング計算ソフト

二次元構造情報だけで高速にシミュレーションを実行

 2002.05.27−アダムネットは、米メタフォリックス(本社・カリフォルニア州)が開発したたん白質と薬物分子のドッキングシミュレーションを高速に行うソフトウエア「DockIt」(商品名)の販売を開始した。ポストゲノムでたん白質の構造解析が進むと、薬物分子との結合や相互作用を調べるニーズが高まると判断。新製品として販売攻勢をかける。LinuxおよびIRIX上で稼働し、ソフト価格は800万円。

 メタフォリックスは、アダムネットが総代理店を務めているケムインフォマティクスの大手ベンダーである米デイライトの100%子会社で、主力製品のDockItは米国では一昨年からの販売実績がある。

 医薬分子が作用する生体側のたん白質分子の活性部位に、任意の分子構造を当てはめ、ドッキングのスコアを計算することが可能。同社では、プロテインデータバンク(PDB)をもとに約5,000種類の既知のリガンドと結合したたん白質クラスターの立体構造情報を2万5,000件収録したデータベース製品「Luna」を提供しており、DockItではここからリガンドを取り除いた後のたん白質の立体構造データを初期座標として用いる。

 結合させる薬物分子の情報は、デイライト特有の“SMILES形式”を用いる。 SMILESは二次元化学構造を記述するためのフォーマットで、他のドッキングシミュレーションシステムが三次元構造データを用いるのに比べて、データベースがコンパクトで扱いも軽いという特徴がある。実際には、システムの内部でSMILESデータをもとに一つの分子あたり100種類ほどの三次元立体配座を発生させ、たん白質の活性部位に対するドッキング計算を行う仕組み。ただ、ユーザーは二次元のSMILESデータを扱うだけですむ。

 計算時間は、1分子について約30秒という。PVMを利用した並列バージョンも用意されており、SMP型のサーバーマシンやLinuxクラスターで高速に動作させることも可能。

 しかし、現在のバージョンではグラフィック環境が用意されていない。実際には、たん白質構造をPDB形式で読み込ませ、そこにSMILES形式の低分子データを導入し、計算結果のスコアを得るという形になる。ただし、たん白質と薬物分子が結合したクラスター構造のデータファイルがPDB形式で出力されるので、それを一般的な分子グラフィックソフトに読み込ませることで可視化を行うことができる。