2002年春季CCS特集:ナノシミュレーション
分子動力学の専門サポートを提供、液晶分子の物性予測で成果
2002.06.20−ナノシミュレーションは、分子動力学法(MD)を専門とするユニークなベンダーで、自社開発の汎用MDソフト「NanoBox」とともに、専門的なサイエンティフィックコンサルティングを含めた形でのトータルサービスを提供している。MDで計算可能な時間スケールが、ピコ秒単位からナノ秒のオーダーへと拡大してきたことにより、具体的な材料設計に役立つシミュレーションがいよいよ実現可能になりつつある。
同社はここ数年、液晶分子を対象にした物性予測に取り組んできており、この間も技術面では着実な進展がみられているという。とくに、液晶分子がねじれる際の弾性エネルギーをあらわすフランク弾性定数の計算に世界で初めて成功するなどの実績があり、液晶デバイスの応答速度に関係する基本物性である回転粘度に関しても実用の水準にかなり近づいてきている。最近では、この粘度計算の技術を利用して潤滑油などへの応用も試みられている。
液晶分子がラビング面で配向するアンカリング現象の解析にもめどがつきつつある。配向膜を構成するポリマー分子と液晶分子との相互作用の問題としてモデル化したもので、高性能な配向膜の開発に役立つとの期待があるようだ。
また、MDの自由エネルギー計算に関しては、液体が液体に溶ける現象をシミュレーションできるようになってきた。こうした溶解度計算では、気体が液体に溶ける現象は以前から扱えたが、今回の成果により液体の混合を分子レベルで解析できるようになるという。
同社では、今後ともサイエンティフィックな観点からのMDの応用展開を進める考え。ユーザーの要望に応じていろいろなテーマに取り組んでいきたいということだ。