千葉工業大学・田辺教授らが化学物質安全性DB検索システムを開発

インターネットで公開、予測プログラムも組み込む

 2002.04.20−千葉工業大学・社会システム科学部の田辺和俊教授らのグループは、化学物質の安全性をインターネット上で検索できるデータベース(DB)システムを開発、無償で一般公開をはじめた。田辺教授が3月まで在籍していた産業技術総合研究所時代に開発した成果で、発がん性と生分解性を調べることができる。DB内に登録された化合物だけでなく、未知の化合物についても化学構造をもとに発がん性などの有無を予測できることが最大の特徴。田辺教授らは今後は千葉工大にて開発を継続し、検索・予測できるデータの種類をさらに増やしていく。

 毒性などの化学物質の安全性に関するデータは、米環境保護庁(EPA)や米国家毒性プログラム(NTP)、国際がん研究機関(IARC)をはじめ、EUや民間の安全性試験機関などにおいてもいくらかが蓄積されつつある。しかし、それぞれの機関によって尺度がばらばらであり、全体を貫いて総合的に安全性データを調べることができないのが現状だった。

 そこで田辺教授らは、入手可能なすべてのデータを集めてそれぞれに再評価を加え、発がん性のデータ約1,200物質について発がん性が「ある」「ない」「疑わしい」の3区分に再構成した。生分解性については、旧通産省が調査した1,300物質の実測データをもとに、生分解性が「良い」と「悪い」の2段階で構成し直した。

 今回のDBシステムは現在、産総研のウェブサーバー(http://www.aist.go.jp/RIODB/CSD/)で公開中。操作はすべてブラウザーから行い、物質名や分子式、CAS番号、構造式で検索することが可能。ここで、DB内にデータが存在しない物質が入力されると、予測プログラムがサーバー上で起動して結果を返す仕組みになっている。

 予測システムには、森口郁生北里大学名誉教授が開発した“FALS法”を利用している。これは、ファジー理論によってあいまいさを含むデータを重回帰分析で扱うことを可能にする技術で、90%以上の精度で毒性などを予測することができるという。計算には、分子の三次元構造に関する情報をパラメーターとして扱うため、利用者のパソコンにChemDrawプラグインがインストールされていれば、構造式描画ツールが自動的に立ち上がって構造式が作成できるようになる。ただ、田辺教授らは化学者ではない人たちに多く利用してもらうことを想定しており、あらかじめFALS解析用のパラメーターを約1万6,700物質ぶんだけ用意した。ここに入っている物質は、構造式を入力しなくても予測結果を得ることができる。

 田辺教授らはさらに、化学者以外が使いやすいように慣用名や商品名などの別名でも検索ができるようにシステムの拡張を図る予定。化学物質をあらわすCAS以外の番号もサポートしていく。すでに開発の拠点は千葉工大に移し、次期バージョンは大学のサイトで公開することにしている。