インフォコムがコムジェネックスの統合創薬支援サービスを提供
ソフトから受託試験、受託合成、ライブラリー提供まで一貫
2002.06.26−インフォコムは、ハンガリーのコムジェネックス社(本社・ブダペスト、フェレンケ・ダーヴァス社長)が製品化した創薬研究のためのトータル支援サービス「EMIL ADMEヒット・コンソーシアム」(商品名)の受注活動を開始した。コムジェネックスおよびソフト子会社のコンピュードラッグ社が提供しているソフトウエア、データベース、化合物ライブラリーや受託合成・受託試験など、年間契約のスタイルですべてのサービスを利用することが可能。料金は年間1,570万円からで、サービス内容を十分に活用すればかなり費用対効果が大きいという。インフォコムでは、2年間で10社程度の契約を見込んでいる。
EMIL ADMEヒット・コンソーシアムは、コムジェネックスが日本市場向けに企画したサービスで、欧米では提供されていない。EMILは藤田稔夫・京都大学名誉教授が開発した創薬支援のためのシステムで、今回のサービス自体は必ずしもEMILを中心とするものではない。むしろ、日本で知名度の高いEMILを冠することで日本市場への浸透を図ろうとする狙いでのネーミングだと考えられる。
さて、今回のサービスは、コムジェネックスグループの持つソフトウエア、化合物ライブラリー、合成・分析設備などのリソースを総動員したもの。主にADME(吸収・分布・代謝・排出)分野を中心にした研究プロセスを総合的に支援することを目指している。薬物が体内でどのように振る舞うかをデータベースやソフトを利用して予測し、その情報を新薬開発に役立てることが狙いである。
具体的には、より活性の高い薬物分子構造を提示してくれるEMIL、構造からADME物性(logP、logD、pKa)を予測するPallas、構造から代謝生成物を予測するメタボルエキスパート、構造から毒性を予測するハザードエキスパート、さらにADME予測機能の組み込み用のツール群などが利用できる。またデータベースでは、47万件の反応データベース、3万2,000件のCHIとCHI logDのデータベース、2万7,000化合物に対する27万件の第一代謝生成物データベース、Pallasで解析した予測値を登録した50万件の化合物データベース、ヒト細胞毒性を実測した5万件の毒性データベース、4,000件のUVスペクトルデータベースなどがそろっている。これらのデータベースは今回外部に初公開されるものも多い。
また、化合物ライブラリーは22万種類をそろえており、基本契約の範囲で1万化合物(各1ミリグラム)が提供される。メンバー価格で格安に追加注文することも可能。コムジェネックスのスクリーニング用ライブラリーは以前から国内でも評価が高いということだ。
さらに、ウェット系のサービスとして、インビボあるいはインビトロでのADME/毒性の受託試験サービス、カタログ化合物の再合成やカスタム合成・ライブラリー構築サービスを提供。コムジェネックスのラボ設備の一部やエンジニアを一定期間確保して占有するなどの要望にも応じるという。
実際には、このサービスは会員制の専用ウェブサイトにアクセスして利用する形になる。ソフトウエアに関しても、将来的にはウェブを介して利用させることを計画しているが、当面はユーザー側のローカルマシンにソフトをインストールして使うことになり、基本契約では全ソフトのシングルユーザーライセンスが交付される。
コムジェネックスでは、日本市場で今回のサービスが成功すれば、欧米でも同様に開始する考えがあるようだ。インフォコムとしても、同サービスの専任者を2名置き、提案活動に力を注いでいく。