独ライオンが米トライポスとの資本提携を解消
2,200万ドルで全株式を売却、独自で技術領域を網羅
2002.04.04−バイオインフォマティクスの大手ベンダーである独ライオンバイオサイエンスは、コンピューターケミストリーシステム(CCS)大手の米トライポスとの資本提携を解消した。2000年2月に総額900万ドルでトライポス株の10.8%を取得し、取締役会にも役員を送り込んでいたが、今回ライオンは保有していた全株式を売却し、約2,200万ドルを入手した。ライオンはこの現金を新たな買収などに使用していく模様で、最近では1月末に米ネットジェニクスを1,700万ドルで買収している。
ライオンは、2000年2月にトライポスの優先株約41万株を1株当たり22ドルで購入していた。今回、ライオンはその優先株を約82万株の普通株に転換し、それをそっくり売却したもの。取り引きは2月7日に行われ、売却総額は2,160万ドルに達した。トライポスの株価(NASDAQ=TRPS)は、2月6日の終値が30ドル、2月7日の終値が27ドルだったと記録されている。
ライオンは、この間に探索研究から臨床段階までの新薬開発の全工程を網羅的にサポートできるソフトウエア技術を確立しつつあり、その結果としてトライポスへの投資がもはや戦略的な価値を持たなくなったと説明している。それに加えて、提携当時は両社が共同でバイエルを相手にした大型プロジェクトの立ち上げを行っていた時期であり、その共同開発がすでに軌道に乗っているため、資本関係を結んでおく必要性が薄れたことも理由にあると思われる。
バイエルにおけるプロジェクトは現在も進行中であり、この点での両社のパートナー関係には変更はないという。ただ、それ以外での両社の関係はやや疎遠になっていくと思われる。というのは、昨年3月の米トレガバイオサイエンス、今年1月の米ネットジェニクスといった一連の買収を通してケムインフォマティクス分野の基本技術をほぼ取得し、ライオンとしてはもはやトライポスの技術力に依存する必要がなくなっているとしているためだ。
この点で重要なのがネットジェニクスの買収。これは1996年設立で60名ほどの従業員を抱える小企業だが、複数の異なるデータベースを仮想的に統合するIBMのミドルウエア製品であるDiscoveryLink(ディスカバリーリンク)の心臓部に当たるデータ変換技術“ラッパー”を開発した実績がある。ネットジェニクス自体の製品は、ディスカバリーリンクの上位に存在して異なるアプリケーションを統合化させる「DiscoceryCenter」(ディスカバリーセンター)と呼ばれ、ライオンはこれを創薬ターゲットの探索からリード化合物の開発、さらには前臨床、臨床までをカバーするアプリケーション統合技術の核として採用する計画である。
ライオンにおける創薬支援システムのテクノロジーマップによると、その網羅性はすでにMDLやアクセルリス、トライポスを凌駕する形になっている。(別図参照)