マイクロソフトがXMLウェブサービス戦略を解説

開発環境がすでに整う、UNIX/Java陣営に対する先行性を強調

 2002.04.05−マイクロソフトは4月2日、ウェブサービスに関する報道関係者向けの技術説明会を開催した。開発環境として3月22日から出荷を開始したVisual Studio .NET(ビジュアルスタジオ・ドットネット)に加え、開発用データベースとして利用できるSQLサーバー2000およびアプリケーション統合環境を実現するBizTalkサーバー2002、さらにクライアントを構成するOfficeXP用のウェブサービスツールキットの提供が始まり、ウェブサービスの開発環境がすでに整ったことをアピールした。また、ウェブサービスの主導権争いにも言及し、他社との戦略の違いについての興味深い見解を表明した。

  ◇  ◇  ◇

 マイクロソフトは、既存製品にアタッチする3つのウェブサービスツールキットと、ビジュアルスタジオ・ドットネットを出荷することによって、ウェブサービスアプリケーションを本格的に開発するための環境を整えた。

 SQLサーバー2000向けに提供されたのが、同ツールキットのリリース3に当たるもので、データベース内のストアドプロシージャーやユーザー定義関数をXMLウェブサービスとして呼び出すSOAPプロバイダー機能の実装、ドットネットフレームワーク上のコンポーネントとSQLサーバー内のデータ連携をXMLベースで実現するSQLXMLマネージクラスの提供などが行われている。

 ビジュアルスタジオ・ドットネットの開発環境と完全に統合されており、データベースの設計からクエリーの設計、ADO.NET(ActiveX Data Objects)によるデータアクセス機能の実装、ASP.NET(Active Server Pages)によるビジネスロジックや中間層の設計、XMLウェブサービスへの対応までの一連の開発工程をカバー。セキュリティ上、ファイアーウォール内での使用に限定されるが、今回のツールキットによりSQLサーバーそのものをウェブサービス化させてネット上で公開することも容易となっている。

 BizTalkサーバー2002向けのツールキットも、ビジュアルスタジオ・ドットネットと完全に統合されて、複数のウェブサービスおよび既存システムを柔軟に組み合わせたビジネスプロセス統合を実現する。これによりBizTalkサーバーは、企業内の各種アプリケーションの統合(EAI)と、ウェブベースでの企業間連携(B2B)を、ウェブサービスに対応した形で橋渡しすることが可能になったという。

 OfficeXP向けのツールキットは、OfficeXPをドットネットのクライアントとするためのもので、エクセルなどのなかに簡単にウェブサービスを取り込むことを可能にした。VBAの開発環境からUDDIレジストリーを用いて利用可能なウェブサービスを検索し、それを自由に組み込むことができる。自動的にそのウェブサービスを参照するクラスモジュールが生成されるので、開発者はVBAプロジェクトのなかにそのクラスを参照する1行を書き込むだけでいい。SOAPやXMLの知識も不要で、新しいことを覚える必要はない。

 デモンストレーションでは、エクセルを使って特定の銘柄の現時点の株価を円換算で表示するという事例が取り上げられた。最新の株価を調べて手入力したり、為替レートを調べたりする必要はなく、株価を取得するウェブサービスと為替レートを提供するウェブサービスをUDDIから探して組み込むだけで、ボタン1つで常に最新株価を円換算で表示するワークシートを簡単に作成できた。

 現時点では、米マイクロソフトが独自に作成しているUDDIに接続することができる。ただ同社では、いまのところはファイアーウォールの内側にプライベートなUDDIを構築し、まずはそれを活用することからウェブサービス対応の業務システム開発を進めることを推奨しているようだ。

 さて、記者セミナーのなかではウェブサービス戦略における他社との比較についても説明が行われた。ここで言う他社とは、UNIXおよびJavaを採用するベンダー群を指す。

 まず重要な点は、ウィンドウズサーバーがOS(基本ソフト)とアプリケーションサーバーの両方の機能を兼ね備えていることだという。基本的にOSとアプリケーションサーバーが異なるベンダーから提供されるUNIX/Java陣営は、ミドルウエア段階で実装がベンダーごとに異なるので、いかにJ2EE(Java2プラットホーム・エンタープライズエディション)といえども、“Write once , run anywhere”は限定的な神話にすぎないという見方を示した。

 これに対して、ウィンドウズはWindowsNTサーバーからWindows2000サーバーにかけてサービスパックなどの形でASP、ADO、IIS(Internet Information Server)、MTS(Microsoft Transaction Server)、MSMQ(Microsoft Message Queue Service)などの機能を追加。次期Windows .NETサーバーのミドルウエア層は、ASP.NET、ADO.NET、CLR(Common Language Runtime)、IIS6.0、COM+1.5(Component Object Model)、MSMQ3.0という構成になる。バージョンアップはされているが、基本的には“WindowsDNA”(Microsoft .NETに引き継がれた以前のフレームワーク)という形で完成した現在のWindows2000サーバーと同じアーキテクチャーであり、ドットネットの開発には直ちに着手していただけるとした。

 同社はここで別図「Technology Timeline」を示し、マイクロソフトの技術開発は常にサン・マイクロシステムズを先んじていたと強調。「現在のJ2EE1.3はXMLウェブサービスには十分に対応できていない。次のJ2EE1.4で本格的に対応するらしい」とし、取り組みの遅さを指摘した。

 とくに、ウェブ型の3層モデルを採用した密結合型のアプリケーションと、XMLウェブサービスを利用した疎結合型のアプリケーションの2つの異なるシステムアーキテクチャーに対し、プラットホームの設計思想の段階からネイティブ対応しているのはドットネットフレームワークだけだと論じた。また、1990年代前半のOLE2/COMの時代から継続的に技術を発展させており、開発者が培った過去の資産やスキルがムダになっていないこともドットネットの大きな強みだという。

 さらに、IBM、オラクル、BEAシステムズ、サンとの比較表を示した(別表参照)。これによると、マイクロソフトが明らかに劣っているのは“マルチOS対応”と“J2EE対応”の2点だけ。「こればかりはどうしようもない」という。また、他のベンダーが最大の攻撃の的にする“ベンダーニュートラル”に関しては、「ベンダーが製造する商品である以上、ニュートラルなど本来あり得ないのでは・・・」と切り返した。

     <マイクロソフトと他のベンダーとの比較>   
  Microsoft IBM ORACLE BEA Sun/iPlanet
Web Services × ×
Dev Tools × ×
Servers × ×
Client × × × ×
Services × × × ×
Vision × ×
Multi Languages × × × ×
Multi OS ×
J2EE ×
Vendor Neutral × × × × ×
      ○=優れている、△=普通、×=劣っている