富士通とCLSがSMP型BLASTで30倍の高速化を達成

最上位UNIXサーバーに最適化、メモリー使用効率を向上

 2002.07.23−富士通とセレスター・レキシコ・サイエンシズ(略称=CLS、本社・千葉市、土居洋文社長)は、遺伝子配列の相同性を検索する標準ソフトである「BLAST」を富士通製UNIXサーバー「PRIMEPOWER2000」(プライムパワー2000)に最適化し、SMP(対称型マルチプロセッシング)型並列処理で最大30倍の性能向上を達成した。両社は今回の技術研究成果をそれぞれのバイオインフォマティクス事業において活用していく考え。

 BLASTのSMP版は米NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)から提供されているが、今回両社はオリジナル版の30倍の性能を引き出すことに成功した。使用したマシンはUNIXサーバーの最上位機であるPRIMEPOWER2000で、高性能プロセッサーのSPARC64GPを最大128個まで搭載できるスケーラビリティが特徴。並列処理のプログラム開発および実行環境を提供する専用ソフトウエア「Parallelnavi」(パラレルナビ)も用意されている。

 実際のベンチマークでは、サーバーを16プロセッサー(563MHz)構成とし、並列動作時のメモリー使用効率を高めるチューニングを施した。平均1,600塩基対のクエリーを200本流した場合に、オリジナルのNCBI-BLASTで20時間かかっていた処理を、約40分にまで時間短縮することができたという。

 富士通は今年の4月にPCクラスター(Linux)を利用した並列型BLASTを製品化しているが、今回はSMP型のUNIXサーバーを用いた成果であり、バイオインフォマティクス研究の幅広い用途・ニーズに応えるうえで意味深い。具体的には、世界的にバイオインフォマティクス研究で多用されているOS(基本ソフト)であるSolaris(ソラリス)を使用しているため、BLAST以外のツールも含めた総合的な研究支援環境をインテグレーションしやすく、また大規模なメモリーとデータベースを統合できることで柔軟な運用が可能なシステム構築が可能となる。

 将来的には、今回の研究成果を製品化につなげる予定だが、まずはこの分野におけるプライムパワーの拡販にも結びつけていきたいということだ。

 一方、CLSは2000年8月に富士通からスピンアウトしたバイオインフォマティクス専門ベンダー。今回のシステムを社内で使用し、遺伝子の機能解析研究などに応用しつつ、ゲノム創薬支援ビジネスの強化に役立てる。富士通とCLSは、今後もバイオインフォマティクスやハイパフォーマスコンピューティング(HPC)分野における技術協力関係を発展させていく計画である。