2002年秋のCCS特集第2部

各論:主要ITベンダー各社のライフサイエンス戦略

 2002.12.05−ライフサイエンスはIT(情報技術)産業にとって今もっとも魅力的な市場であるとみられている。そもそも、人間が存在するかぎり医療や健康に対する要求が尽きることはあり得ないし、とくにここ数年のゲノムビジネスの拡大の波に乗って、“ゲノム創薬”のために高速なコンピューターや大容量のストレージ、高機能なソフトウエアが次々と求められているためだ。この分野の研究に国レベルで巨額の予算が注ぎ込まれていることに加え、画期的新薬の開発を目指す民間の製薬会社やバイオベンチャーもITを積極的に導入してきている。このため、IT産業のハードベンダー、ソフトベンダー、システムイングレーターがライフサイエンス支援システム事業に続々と参入してきているのが現状。コンピューターケミストリーシステム(CCS)特集第2部では、これら主要各社の戦略を紹介する。

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富士通

NEC

日本IBM

サン・マイクロシステムズ

日本HP

アクセルリス

CTCラボラトリーシステムズ

菱化システム

日立ソフトウェアエンジニアリング

インフォコム

住商エレクトロニクス

三井情報開発

日本オラクル

NECソフト

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富士通

 富士通は、1980年代前半からCCS事業を推進している国内で最も古いベンダーの一つで、海外のCCS製品をいくつか吸収した実績などを生かしつつ、現在では数少ない国産CCSベンダーの1社として活躍している。1999年11月には事業ターゲットを明確に定め「ライフサイエンス推進室」を組織化したが、いよいよ今年の10月に「ライフサイエンスシステム事業部」を発足させた。

 新たな事業部体制のもとで、同社は製薬産業の探索研究、非臨床、臨床、申請にいたるまでのR&Dを一貫支援できる体制を整えている。富士通本体のCCS事業は研究段階のサポートを中心にしてきたが、子会社の中には開発段階に強い企業も多く、オール富士通として包括的なサービスが可能となっている。

 とくに、今後は米食品医薬品局(FDA)をにらんだグローバル対応のニーズが拡大するとみており、来年にかけては製薬企業の21CFRパート11対応への取り組みをコンサルティングからシステム構築までのソリューションサービスで支援することに力を入れていく。

 今年については、新たに販売権を取得した加ACD製品が好調に推移した。マスなどの分析装置のデータを解析するソフトウエア群で、米ケンブリッジソフトの電子ノートシステムも合わせて、研究業務効率改善に役立つエンタープライズシステムの提案につなげていきたいという。

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NEC

 NECは、遺伝子解析のためのHPCプラットホームの提供から創薬支援システムの開発、さらに将来的には診断・医療分野までを含めた構想でライフサイエンス事業を展開している。

 今年最大の成果は、具体的に抗がん剤開発をターゲットにした日本化薬との共同研究契約の締結で、NECは標的たん白質と医薬候補化合物群とのドッキングシミュレーションをインシリコで行うシステムを開発する。同様のソフトは最近海外の大手CCSベンダーからも多数提供されているが、日本化薬としてはどれにも飽き足らないために、NECとの共同開発に踏み切ったという背景があるようだ。

 NECは、ドッキングシミュレーションは計算化学の専門家が密着サポートして研究を進める必要があるとしており、共同開発の成果はパッケージではなくサービス事業として製品化する可能性もあるという。

 また、大阪大学サイバーメディアセンターからのバイオグリッド基盤システムの受注も大きな話題で、今年はそれに採用されるブレードサーバーや関連したBLAST専用クラスターなども商品化した。

 国内のPCクラスター市場の6−7割はBLAST向けだといわれており、来年に向けてもこの分野の戦略を強化する方針。とくにアミノ酸配列の相同性を解析するPSI-BLASTのクラスター化に成功しているのは同社だけだという。

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日本IBM

 日本IBMは、IBMのグローバル戦略に呼応する形で昨年10月に「ライフサイエンス事業推進部」を設立、来年に向けてさらに拡大路線を強化する方針だ。専任スタッフを増員し、バイオインフォマティクスなどの研究分野に加えて、臨床・医療分野、分析・計測分野など幅広い世界でIBMの存在感を高めていく。

 同社は、国産ベンダーとは異なり、いわゆるウェット系の事業やアプリケーションソフトには手を出さない方針。サーバー、PC、ネットワーク、ストレージなど、IBM本来の強みを生かしたITインフラの提供に集中している。

 日本IBMが本格的に取り組みはじめて1年が経過したが、それまではあまりIBMが浸透していなかった分野で着実に知名度が向上している実感があるという。

 システムインテグレーション(SI)サービスも武器にしているが、今年の春にエーザイの研究用統合データベースシステムを構築・稼働させたという実績がすでに出てきている。これは、ライフサイエンス向けの戦略商品である「ディスカバリーリンク」の国内初ユーザーにも当たる。

 来年は、官公庁絡みのSI案件にも積極的に応札していく考えだが、合わせてゲノム情報と臨床研究を結びつけた“インフォメーションベースドメディシン”(IBM)にも力を入れる。神戸市から神戸製鋼所などと共同受注したTRIの案件もその一貫だという。

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サン・マイクロシステムズ

 サン・マイクロシステムズは、国内でバイオインフォマティクス関連のアプリケーションを手がけている主要ソフトベンダーおよびインテグレーター19社とパートナー関係を確立。8月に事業拠点となる「ライフサイエンスソリューション・イン・iForceレディーセンター」を立ち上げた。今年は共同セミナーなども多数実施したが、来年はパートナーとの連携をさらに深めて、具体的なビジネスに結びつく活動に力を入れる。

 今年3月、京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンターに、国内のゲノム研究の中核となる「生命システム情報統合データベース」(KEGG)のネットワークサーバーとして、サンの最上位マシン「サンンファイアー15K」が導入された。最上位機がまとめて3台という大型案件で、ライフサイエンスにおけるサンの知名度は一気に向上した。

 同社が提供するのはあくまでもプラットホームで、アプリケーションはパートナー戦略が基本となる。ただ、オープンシステム、インターネットなどの分野でのサンの先進性、データベース分野でのオラクルとの協調、グリッドコンピューティングへの取り組みなど、最新の標準をベースにしたインフラを確実に提供できるのが強みである。

 とくに、グリッドでは自社のプロセッサー開発で三極を結んだ7,500台のグリッドを稼働させており、そうしたノウハウの還元も図っていく。

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日本HP

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、コンパックコンピュータと合併し、新生HPとしてライフサイエンス事業への取り組みをあらためて進めている。その戦略は良い意味で“不変”。旧DEC時代からの科学技術計算市場での強みを引き継いできており、スーパーコンピューター、ハイエンドUNIXサーバー、PCクラスター、グリッドコンピューティングなど、この分野のプラットホームをあらゆる形で提供することが可能。

 新生HPでは、HPTC(ハイパフォーマンステクニカルコンピューティング)事業部門においてライフサイエンス事業を推進している。研究開発分野に強い旧コンパックと、医薬品製造や臨床試験などに強かった旧HPの力が合わさり、バイオ関係だけでなく、健康・医療、材料科学分野も含めたアプリケーション領域を幅広くカバーしている。

 日本HPは、BLAST解析を支援する総合ソリューションなど、国内主導での活動も行ってきていることが特徴。来年に向けては、とくにポストゲノム領域の研究活動をサポートできるインフラを用意することに力を注ぐ。システムインテグレーションサービスにもこれまで以上に積極的に取り組んでいく。

 あらかじめ余裕をもってシステムを入れておき、使った分だけ支払う「ユーティリティーコンピューティングサービス」など、ユニークな取り組みも強化する方針だ。

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アクセルリス

 CCS最大手ベンダーのアクセルリスは、ライフサイエンス分野の製品群を「ディスカバリースタジオ」の製品名で拡張再編成しており、来年に向けて製品体系を大幅に充実させる。合わせて、日本法人の陣容も引き続き強化していく。同社の対日戦略はこの1年で大きな変化があったが、ユーザーの反応はおおむね好意的で、とくにサポート面の充実や開発元からの情報量の増加に対して評価する声が多いという。

 ディスカバリースタジオ(DS)は、今年の6−7月に旧MacVectorやOMIGAなどを移行させた「DSジーン」が、10月にはたん白質モデリング機能を中心とした旧Insight IIを包含した「DSモデリング」が国内市場に本格的に投入された。新しいユーザーインターフェースの使いやすさが注目されており、とくにCCSのパワーユーザーが多いInsight II利用者からも高く評価されているという。

 来年以降は、構造情報を扱うジーンアトラス/アトラスストア、バーチャルスクリーニングのリガンドフィットなどの機能が加わってくる予定。リガンドフィットはグリッドコンピューティング環境にも対応しており、国内での本格展開が待たれるところだ。

 また、ファーマコフォアモデリングを合成研究者が簡単に利用できるようにするDSメドケムエクスプローラーも最近非常に好調な売れ行きを示しているという。

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CTCラボラトリーシステムズ

 CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、国内唯一のCCS専門ベンダーとして製薬産業の研究開発を総合的に支援できるソリューションをそろえている。需要の変化に敏感に対応し、その時点で常に最適のソフトウエアを海外から導入することに加え、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)グループの力も利用しながらエンドツーエンドのシステムインテグレーション(SI)サービスも提供している。

 同社では、国内の製薬産業はグローバル対応を急いでおり、米食品医薬品局(FDA)の21CFRパート11への準拠に向けてIT投資を集中させると判断、具体的なラインアップを整えてきた。GCPでオラクル、GMPでアプライドバイオシステム、副作用情報管理でアリスグローバルなどのパート11対応製品の販売権を取得しており、新薬開発段階でのイメージ情報管理システムも近く販売を開始する予定。来年にはパート11対応が大きなビジネスになると見込んでいる。

 バイオインフォ分野では、独ライオン製品を主体に展開してきたが、今後はDNAチップ/マイクロアレイの発現データをもとに遺伝子の制御領域を解析する独ジェノマティクス社の製品群に力を入れる。いまブームの発現解析のあとを受けた研究領域をいち早く支援する狙いがある。

 ケムインフォでは、きめ細かなアフターサポートが好評で、英IDBS製品の伸びが著しい。

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菱化システム

 菱化システムは、加CCGの統合型CCS「MOE」を中核にした事業戦略を推進。MOEはCCSの開発環境も兼ねた柔軟なシステムで、同社では現在手がけているさまざまなツール群をMOEから自由に呼び出して統合的に利用させるなど、単純な輸入販売にとどまらないユニークな事業スタイルで実績を伸ばしている。

 MOEは、すでに国内での導入が60サイトを超え、その知名度もかなり上がってきている。海外では、グラクソやアベンティスなどサイトライセンスを結ぶユーザーも増えているようだ。MOE自体は汎用のCCS製品だが、現時点でのアプリケーションはライフサイエンス関連が中心となっており、製薬会社での導入が多い。

 来年の春には新バージョンも予定されている。オラクルとのリンクやJavaへの対応など、プログラムのコア部分が強化されるとともに、アプリケーションではファーマコフォア探索機能が拡充される。バーチャルスクリーニング機能はさらに先のバージョンでサポートされる予定だが、菱化システムではMOEで自社開発した簡易型バーチャルスクリーニング機能を無償公開していく。年内には提供できるということだ。

 一方、米ケムイノベーションの統合型LIMS「CBIS」も反響がいい。これも開発キットが来年には提供されるため、菱化側でアプリケーションをつくる計画がある。

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日立ソフトウェアエンジニアリング

 日立ソフトウェアエンジニアリングは、バイオインフォマティクスの基盤となる情報システム事業と、遺伝子の発現解析を支援する研究用から臨床用までを見越したDNAチップ/マイクロアレイ事業を車の両輪として展開させ、相乗効果を生み出している。昨年12月に開設した「ライフサイエンス研究センター」でいわゆるウェット系の業務にも本格的に取り組んでおり、自社のチップを自ら解析してデータを蓄積することで、来年には特徴のあるデータベース製品の開発を実現させる計画である。

 同社は汎用DNAチップ「ハイパージーン」として、イースト菌、ヒト白血球、ラット肝臓などのチップを研究用に量産出荷している。オリゴ方式のヒューマンチップも準備中で、ラットも合わせて近く提供開始する予定となっている。

 ただ、今年順調に伸びたのは情報システム関連の事業で、バイオ研究がゲノムからたん白質領域へと進展するにともない、たん白質を同定したり三次元構造を推定したりするなどの分析データ解析のニーズが拡大。研究インフラを整備するためのシステムインテグレーション(SI)事業が好調に推移した。

 また、日本IBMとの共同で遺伝子索引情報の配信サービス「ジーンインデックス・デリバリー」も開始した。ワールドワイドでの協業を見込んだもので、来年に向けてさらに機能を強化して実用性を高めていく。

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インフォコム

 インフォコムは、ライフサイエンスユーザーの立場に立ってソリューションを広げてきており、海外の優れたパッケージソフトを紹介するとともに、化合物ライブラリーの提供やADME(吸収・分布・代謝・排出)受託試験などサービス事業にも力を入れている。今後は、システムインテグレーターとしての総合力を生かした事業展開を志向していく方針だ。

 今年はポストゲノム領域の研究が活発化してきたため、とくにたん白質関連のソリューションが好調だったという。その筆頭が英マトリクスサイエンスの「Mascot」。質量分析(マス)データを解析してたん白質を同定するためのシステムで、競合製品がほとんど存在せず、値段も手頃なことから導入が加速した。国内でMascotに言及した論文が増えたこともそれを後押ししたようだ。インフォコムでは、これらの大量のプロテオーム関連データを統合管理するための「preXence」を自社開発して提供している。

 また、たん白質と薬物分子とのドッキングシミュレーションなどを行う米シュレーディンガーの「ファーストディスカバリー」も大きな注目を集め、実績を大幅に伸ばした。

 さらにADME関連では、物性予測を単純にスクリーニングのフィルターにするのではなく、吸収性や溶解性を改良するなどの緻密な候補化合物探索の手法が広がっているという。

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住商エレクトロニクス

 住商エレクトロニクスは、米トライポスの創薬研究支援のためのソリューションを幅広く提供しており、ソフトウエアの販売だけでなく、化合物ライブラリーや受託研究サービスまでも含めて事業領域を拡大してきている。また、昨年から販売開始した米ヌージェネシスの研究所データ統合管理システムを利用し、今後は新薬の開発段階に対するサポートも強化していく方針だ。

 最近、たん白質の構造情報を利用した創薬研究方法が定着してきたことで、トライポスが得意とするバーチャルスクリーニング技術に注目が集まってきている。たん白質の立体構造に対して、化合物データベースから候補化合物の構造をドッキングシミュレーションで当てはめ、実際に購入する化合物を選定したり、具体的にコンビケム合成する物質を絞り込んだりする用途に役立つ「FlexX/CombiFlexX」などの製品に対する評価が高い。

 最近では、たん白質分子の柔軟性を考慮したドッキングが行えるなどの新しいツールも開発中。スクリーニングデータを解析するデータマイニングツールも商品化される予定だという。

 こうしたトライポスのソフトウエア技術を反映させ、子会社のレセプターリサーチで実際の化合物も製造されており、そのライブラリーの中身からトライポスの技術力があらためて理解され、受託研究へとサービスが発展する事例もある。

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三井情報開発

 三井情報開発(MKI)は、システムインテグレーターとして100名規模の体制でバイオインフォマティクス事業を推進、次なる飛躍への基盤を整えている。これまでに手がけたプロジェクトの成果を積極的にパッケージ開発へと結びつけているのも同社の特徴で、これら実績豊富なパッケージ製品群が大型案件を呼び込む武器になりつつある。

 同社にとって今年最大の実績は、10月に受注した神戸市の「トランスレーショナルリサーチインフォマティクスセンター」(TRI)プロジェクト。神戸製鋼所を中心に5社の連合で受注したものだが、MKIはバイオインフォマティクスのシステム部分を担当する。

 この案件を獲得できたのは、実際には同社の存在が大きかったようだ。というのは、このTRIは来年3月末の完成を目指した6ヵ月間の短期プロジェクトで、ゼロからシステム開発に取り組んだのでは納期に間に合わないからである。すでに実績のあるパッケージを持っており、それを柔軟に統合することで短期間にシステムを実現できることが決め手になった。

 具体的には、個人情報の匿名化システム「SCTS21」、大量の試料を効率良く管理する「バーコードLABシステム」、遺伝子発現解析システム「ジェノミックプロファイラー」などのパッケージをベースにする。

 同社では、TRIの実績をテコに、各地域での同様の案件の獲得を目指していく方針だ。

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日本オラクル

 日本オラクルは、今年の6月にライフサイエンス事業推進部を正式に立ち上げ、東京・大阪で8名体制へと組織を強化しつつある。IT市場では標準的なリレーショナルデータベース(RDB)の地位を確立しているオラクルだが、遺伝子情報などはいまだフラットファイル形式で扱われている場合が多く、オラクルでデータ管理することの有用性を強く訴えていきたい考え。ただ、事業対象はゲノム/たん白質分野だけでなく、臨床・医療分野まで広く取り組んでいく戦略である。

 同社はこの分野を最重点に位置づけ、次期バージョンではバイオインフォ特有の機能を盛り込む計画を明らかにしている。BLAST解析へのチューニングやバイオインフォ分野の解析で必要になる統計関数のサポート、クラスタリング機能などを統合していく予定。

 その先駆けとして、来年春には独ライオンと共同でオラクルとSRSとのゲートウェイ製品をリリースする。オラクルの標準的なSQLで、SRSの遺伝子情報を検索できるようになる。

 また、フラットファイルをオラクル形式に変換して取り込むことで、BLAST検索を効率化するソリューションの開発にも取り組んでいるということだ。

 同社はバイオインフォマティシャン養成にも貢献しており、オラクルマスターなどのIT技術者に対し、バイオインフォを教育する研修プログラムを提供してきている。

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NECソフト

 NECソフトは、次世代の基幹事業として育成する方針でライフサイエンス分野に取り組んでおり、多方面との共同研究を通じて着実に技術力を蓄積してきた。来年度はいよいよ本格的な事業化の段階に入り、複合的な情報を効率良く扱う統合データベース製品を商品化する計画。バイオ専門システムインテグレーション(SI)部隊も立ち上げ、積極的に官公庁関係のプロジェクト受注を目指していく。

 同社は、主にポストゲノムの創薬支援の領域から遺伝子診断・テーラーメード医療などの先端医療分野までをカバーする広い視野で事業戦略を展開。今年1年間で共同研究の相手もほぼ倍増し、現在では20近い大学・研究機関とのプロジェクトが進んでいるという。具体的に研究成果を特許として出願する事例も出てきている。

 とくに、力を入れているのが、受容体たん白質の構造を知り、それをもとにインシリコ/インビトロで薬物設計を行うための研究支援システム技術の確立。このため、いわゆるウェット系の研究者も採用しており、コンピューターがはじき出した答えの妥当性を実験で確かめるフェーズに入ってきているという。システム開発は今年度で一応のめどを付け、実務で活用しながら事業化へのタイミングを図っていく。

 また、たん白質立体構造予測システムの開発も中期的なテーマとして進めており、量子力学と古典力学の両面から研究中。