NEDO技術評価委員会が土井プロジェクトOCTAの事後評価を開始

技術内容・有益性などを評価、2003年2-3月に最終報告書

 2002.10.16−今年の3月で終了した経済産業省の大学連携型プロジェクト「高機能材料設計プラットホーム」(通称・土井プロジェクト)の技術的成果を問うための事後評価分科会が12日、東京・池袋で開催された。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術評価委員会の分科会として組織されたもので、プロジェクトの実施責任者だった名古屋大学の土井正男教授らのグループから評価委員に対して詳しい説明が行われた。分科会では、今年12月から来年1月にかけて第2回の会合を開いて評価を確定。来年2月−3月には最終報告書をまとめる。土井プロを通して開発された「OCTA」は、高分子材料のメソ領域を解析できる先鋭的なシステムだとされているが、具体的にどのような評価が下されるか注目される。

 国家プロジェクトの実施後における技術評価は、そのプロジェクトが所期の研究目的をきちんと達成できたかどうか、あるいはそもそも政策的位置づけにおける妥当性があったのかどうかなど、第三者の立場にある有識者によって厳正に評価しようという考え方のもとに実施されている。もともと、1996年7月に制定された「科学技術基本計画」を踏まえて1997年8月から経産省の技術評価調査課によって着手された。昨年5月からはNEDOによる実施体制に移行している。

 土井プロジェクトの事後評価分科会は、会長に細矢治夫・お茶の水女子大学名誉教授、会長代理に寺倉清之・産業技術総合研究所先端情報計算センター長、委員に高須昌子・金沢大学理学部助教授、長阪匡介・三菱総合研究所先端科学研究センター長、兵頭志明・豊田中央研究所フロンティア研究部門第五グループ長、船津公人・豊橋技術科学大学工学部助教授−が名を連ねている。

 当日の分科会では、プロジェクトの全体概要に続き、OCTAシステムとそれに組み込まれている4種類の計算エンジン(粗視化分子動力学のCOGNAC、レオロジーシミュレーターPASTA、動的平均場法のSUSHI、多相構造/分散構造シミュレーターMUFFIN)の理論的背景や計算事例などが説明された。また、プロジェクトの成果がフリーに外国にも公開されていることや、国内で商用版の開発計画が進んでいることも紹介された。

 評価委員の中からは、税金を使って開発したソフトを無料で外国に提供することの是非、著作権の所在や海外のソフトウエアとの競合優位性などに関する質問が飛んだ。これに関し、土井教授は「完全にオープンにすることはプロジェクト発足時からの大原則だった。外国にOCTAのファンやサポーターをつくるくらいの気概でやらないと、プロジェクト後も発展できるシステムにはならない」と力説した。

 また、OCTAの使い勝手が良くないという指摘に対しては、「スクリプト言語を扱える研究者がいくらでもカスタマイズできる自由度を最優先させた。プログラミングのスキルの低い利用者に対しては、商用版の方でフォローしてくれると思っている」(土井教授)とした。

 この土井プロジェクトに対しては、4年間で15億5,200万円の予算が投下された。成果物であるOCTAシステムはフリーソフトユーザー会が運営しているウェブサイト(http://octa.jp)からダウンロード可能。ホームページにはBBS(掲示板)を中心に1日平均1,000件のアクセスがあり、4月以降に合計で約380本がダウンロードされたという。また、CD-ROMを500セット作成したが、それもすべて配布完了となっている。

 評価委員からは、OCTAの活用ノウハウを広く産業界に供することで日本の対外競争力を高めることができるのではないかとの意見も出された。その意味では、今年の9月に高分子学会の高分子計算機科学研究会講座として、OCTAのインストールから基本操作までのハンズオンセミナーが開催されている。受講者が自分のパソコンを持ち込んで行ったもので、企業の研究者を中心に約70名の参加があるなど好評だったという。次回は東京での開催を予定している。現在のOCTAを使いこなすためにはかなりの勉強が必要であり、こうした講習会には大きな意味があるといえよう。

 土井教授らのグループは、今年の12月に機能強化とバグフィックスを図った“OCTAクリスマスバージョン”のリリースを計画している。各エンジンもそれぞれバージョンアップするほか、グラフィック環境であるGOURMETの高速化を実現する。ファイル読み込みなどの速度が10−20倍速くなるという。