エヌビディアが最新グラフィックプロセッサーGeForceFXを出荷開始

映画水準のCGキャラクターをリアルタイム生成、熱対策/静音化も万全

 2002.12.07−グラフィック専用プロセッサー(GPU)最大手のエヌビディアは6日、従来の3倍近い実効性能を発揮する次世代チップ「GeForceFX」(商品名)の量産出荷を開始したことを国内で正式発表した。0.13マイクロメートルの銅配線プロセスを採用し、1億2,500万トランジスターを集積。これを搭載したパソコン用グラフィックカードは来年2月頃から店頭に並ぶ予定だという。

 GeForceFXは、現行の最上位GPUであるGeForce4 Ti4600と比べ、一般的なゲーム用グラフィックのベンチマークで2.5−3倍の描画性能を発揮する。とくに、同社では“シネマティックコンピューティング”なる新概念を具現化する製品と位置づけている。

 最近の映画などのコンピューターグラフィック(CG)はきわめてリアルな画像を実現しているが、それは1枚の高解像度の画像を時間をかけてレンダリングしているためで、リアルタイムレンダリングが前提となるゲーム用CGではキャラクターの表情を表現できなかったり、毛髪などをきめ細かく動かすことができなかったり、衣服の質感をリアルに表現できなかったりしているのが現状だという。

 今回のGeForceFXは、世界で初めて1GHzのDDR2メモリーを搭載することで、GPU自体の動作周波数を500MHzに高めることに成功。毎秒40億ピクセルの圧倒的な描画性能に加え、画像プログラミングには独自の“Cg言語”を利用可能で、長いシェーダープログラムをサポートすることにより複雑な画像効果を自由に作成できるようにした。また、映画並みの画像品質をもたらすため128ビットのトゥルーカラーを実現している。これまでの32ビットカラーでは、各カラー成分に対して数百階調の表現しかできなかったのに対し、128ビットカラーでは数百万階調の画像表現が可能になるという。

 一方で、熱対策や静音化対策でも新技術を導入した。熱対策は“FXFlow”熱管理システムと呼ばれ、外気を吸気し、そのまま外へ排気する仕組み。この場合、カードから発生した熱がパソコン内部に逃げることはなくなるが、拡張スロット2枚分のスペースが必要になる。実際のインプリメンテーションは、チップを採用してカードを開発するメーカーに任されるようだ。

 静音化対策は“サイレントランニング”と呼ばれており、この機能はチップ内に組み込まれている。特許出願中のまったく新しい技術で、GPUパイプラインの動きを探知することで、GPUが行っている処理の中身を探り、オフィスアプリケーションなどの2次元処理を行っていたらGPUのクロック速度を自動的に引き下げてくれる(ダウンレートは未公表)。逆に3次元処理を中心にするゲームをプレイ中は自動的にフル性能を発揮できる状態になる。さらに、GPUの温度と電流を感知し、電圧や冷却ファンの速度も制御するというものだ。

 当面、GeForceFXは1品種のみで、ファミリー化は未定だとしているが、当然ながら近いうちに上下へのラインアップ展開が図られるだろう。現行のGeForce4 Ti4600/Ti4200、GeForce4 MXも販売は継続されるが、FX投入にスライドさせて価格は引き下げられる見込みである。

 なお、GeForceFXの名前の由来はエヌビディアが買収した3dfx社の社名から来ている。両社の技術陣が統合しての共同開発の成果だという思いがこめられているようだ。