富士通研究所と富士通が機能性有機色素の光物性を高精度に予測するソフト
MOPAC2002のMOS-Fを利用、PM5の拡張で実用化
2003.03.21−富士通研究所と富士通は、半経験的分子軌道法ソフトウエア「MOPAC2002」(商品名)を利用して、機能性色素などの光物性を高精度に予測できるシステムを開発した。有機EL材料やフォトクロミック材料などはその分子構造中に極性基を含んでいるものが多く、精度良く計算することが難しかったという。新システムは、光物性を予測するためにパラメーターセットを改良したもので、今年の6月をめどに商品化する予定。
今回の研究開発内容は、18日から20日まで開催された日本化学会第83春季年会で発表された。具体的には、MOPAC2002でサポートされている高精度パラメーターセットである“PM5”を拡張し、電子同士の斥力計算や分子軌道の算出、光吸収にともなう電子同士の斥力変化などを計算できるようにすることで、その有効性を確かめた。極性基が結合したことによる分子内の電子分布をより高精度に予測できるNDDO(Neglect of Diatomic Differential Overlap)分子軌道法に基づいて最適化された原子のエネルギー値を再現するようにパラメーターが調整されている。NDDO法では、二原子にまたがる原子軌道間の電子斥力を計算するため、電子を受容・供与する性質を持つ極性基が結合した系をうまく扱うことができるという。
実際の計算は、この拡張PM5パラメーターセットを、富士通研究所が独自開発した半経験的プログラムMOS-F(MOPAC2002にバンドルされている)に組み込んで行った。従来の計算法や実測値と比べて検証したところ、今回の手法は高い予測精度を示したという。(別図参照)
同社では、今回のシステムは機能性有機色素に関して大学などでの基礎研究から企業における材料開発まで幅広く利用できる実用レベルに達していると判断、6月をめどに製品化を図ることにした。MOS-Fバージョン6として、UNIX版のMOPAC2002およびウィンドウズ版のWinMOPACにバンドルする形で提供する。