マイクロソフトが国内で本格的にウェブサービス事業を展開へ

数ヵ月以内にまずドットネット・アラートを開始、メールに代わる情報提供手段に

 2003.01.28−マイクロソフトは、ウェブサービスを利用したドットネット(Microsoft .NET)戦略を本格化させる。消費者に対する電子メールに代わる情報提供手段として、利用者が欲する情報だけをタイムリーに送り届ける「.NET Alerts」(ドットネット・アラート)を数ヵ月以内に日本でサービス開始する計画を明らかにした。米国では昨年の春から本格スタートし、すでに20種類近くのサービスが提供されているもの。ウェブサービスは、企業内での活用の段階を経て、今年から来年にかけて商用利用の進展が期待されており、その先陣を切るサービスとして反響が注目される。

 マイクロソフトは、2000年6月に業界に先んじてドットネット構想を発表したのち、現在のコンポーネント技術およびネットワークコンピューティング技術の標準であるJavaやCORBA、COMを上回る投資対効果(ROI)を引き出せる次世代技術として、ウェブサービスを強力に後押ししてきている。

 同社では、「10年以内にすべてのソフトウエアの機能はウェブサービス化する」、「10年以内にすべてのハードウエアはウェブサービスからプログラム可能となる」、「10年以内にすべてのネットワークはウェブサービスとして接続可能となる」−と主張しており、あらゆる情報がXML形式でネットワーク上に蓄積され、ウェブサービスを使ってそれらの情報を自由に引き出したり格納したりする時代になるとも予想している。

 同社は、ウェブサービスのための技術を提供することに加え、産業界が利用できるコンポーネントレベルのウェブサービスを自ら事業化しており、それを「ドットネット・マイサービス」と名付けて製品化を推進中。全部で15種類ほどのサービスが企画されており、今回のドットネット・アラートもその一つに位置づけられる。

 これは、商品の発送やプロモーションの案内、新規サービスの情報などを特定の顧客に通知できるようにするサービスで、ユーザーがこのアラート(通知)を受け取る仕組みはあらかじめWindowsXPに組み込まれている。米国では、オークションサイトのイーベイ、株価情報を提供するNASDAQ、交通案内のカーポイントなど約20種類のサービスが実際に行われている。国内でも、すでに複数の企業と商談が進んでいるという。

 ドットネット・アラートは、現在よく利用されているメールマガジン形式での情報提供に比べて、ユーザーにとっての利便性が高く、その結果として企業にとっても大きな宣伝効果が期待できるという。例えば、どんな情報をどのように受け取りたいかをユーザー自信がきめ細かく設定可能。通常は、通知が届くとWindowsXPのタスクバーの隅にメッセージがポップアップするが、外出時には電子メールで受け取ったり、携帯電話の方へ通知させたりすることが自由に行える。その時点でユーザーがどのデバイスからインターネットへアクセスしているのかは、ドットネット・マイサービスの他の機能をいくつか組み合わせることによって判断ができる仕組み。ユーザーは常にホットな情報を受け取りたい時に受け取りたい方法で知ることができる。

 具体的なサービス例としては、NASDAQの株価情報サービスでは、指定した銘柄の株価が何%上昇あるいは下落した時、何ドルを超えた時など、アラートを発してほしい条件をきめ細かく定めておくことが可能。交通情報提供のカーポイントでは、いつも使う経路を設定しておけば、その道路の混雑状況・事故情報などをその都度知らせてくれる。その他、天気予報に関して、外出中に自分がいまいる場所の予報が変わった時だけアラートを出してくれるなどのサービスもあるという。

 実際、米国でのこの1年間の利用状況をまとめると、一般的なメール配信方式ではURLをクリックしてもらえる確率が1−5%ほどにとどまっていたのに対し、ドットネット・アラートでは約40%のクリック率があった。また、企業側は各ユーザーのメールアドレスなどを知ることはできず、マイクロソフトの認証サービスであるドットネット・パスポートのIDに対して通知する方式であるため、プライバシーを気遣うユーザーにも好評だという。ただ、それぞれの通知はマイクロソフトが中央管理している“アラートサーバー”を経由して振り分けられることになるため、すべての情報がマイクロソフトに集まることになる。今後、この点がライバル陣営の攻撃の的になる可能性はあるだろう。

 費用に関しては、ユーザーがドットネット・アラートのサービスを利用するのは基本的に無料で、逆に通知側の企業が柔軟なビジネスモデルを設定することができる。企業がマイクロソフトに支払う費用に関しては、ユーザー数および通知数に応じた月額料金となっており、例えばユーザー数が10万人以上かそれ以下か、月間通知数が30件以上かそれ以下かといった条件で料金体系が異なっている。米国の場合、標準的なケースでは、ユーザー当たりの単価は月額0.075ドル程度だという。また、ドットネット・パスポートの利用契約が別途必要で、そちらは年間1万ドルのサービス費用と同1,500ドルのサイト確認費用が発生する。