CCS特集:NEC

MolStudio開発体制さらに強化へ、海外市場も仕切り直し

 2003.06.26−NECは、計算化学の代表的ソフトウエアである米ガウシアン社の「Gaussian」向けの専用グラフィックシステム「MolStudio」を開発、販売している。昨年7月には、そのガウシアン社自身と販売提携を結び、世界進出への足がかりを築いたが、先方が最新版の「Gaussian03」の開発に手を取られていたこともあり、残念ながらまだ実際には販売活動が行われていない。あらためて仕切り直し、ガウシアン社とのパートナーシップを強化していく方針だ。

 MolStudioは、計算化学の専門家以外には敷居の高かったGaussianを簡単に利用できるようにするグラフィック機能を提供しており、そのわかりやすさと使いやすさで日本市場では高い知名度を誇っている。累計出荷は700本を超えており、ユーザーからのフィードバックも増えてきているということだ。この実績が海外市場でどう評価されるかが注目されるところ。ガウシアン社のベータサイトに対してテストライセンスを発行し、積極的に性能を評価してもらおうという考えもある。

 今年はさらに開発体制を強化する計画で、まずは夏をめどに最新版として出荷がはじまっているGaussian03に対応したリリース3.2を製品化する。新しく加わったキーワードなどをフォローするためのマイナーバージョンアップ(既存ユーザーには無償)で、本格対応は今年度内に発売予定の次期リリース4にて実施することになるという。

 Gaussian03の発売はやはり今年の計算化学分野の最大の話題であり、NECとしてもスーパーコンピューターSXシリーズ用の目玉のアプリケーションと位置付けている。SX専用OS(基本ソフト)であるSuperUXに対応したGaussian03の開発も順調だが、いままでよりも大規模な分子の計算が行われるようになると予想されるため、MolStudio側でも巨大データをストレスなく扱うための入出力速度の改善など、内部的な強化がかなり行われるようだ。

 一方、CCS市場全体では、たん白質に関連したシステムの需要が高まっていることから、MolStudioに生体高分子表示機能を追加する計画。プロテインデータバンク(PDB)形式のファイルを取り扱えるようにするほか、巨大分子のための描画系も大幅に強化する。今度のリリース4では、プログラムの中身が全面的に書き換えられることになるという。将来的には、Gaussianだけでなく、CCSの広い分野に適用できるプラットホームに発展させていきたいとしている。