CCS特集:NECソフト

バイオインフォの基盤製品を開発、データ・知識・ツールを統合

 2003.06.26−NECソフトは、バイオインフォマティクス分野の各種のデータから知識、解析ツールまでを統合できるプラットホームを実現できる独自パッケージソフト「セマンティックオブジェクツ」を米カリフォルニア大学アーバイン校のフィリップ・シュー教授と共同で開発、販売を開始している。経済産業省プロジェクトに採用されるなど、早くも実績があがりつつあり、同社では国内でのパートナーづくりを推進して本格的な事業拡大を目指していく。

 セマンティックオブジェクツは、アプリケーション開発の基盤技術として利用できる製品で、シュー教授が考案した“コンポーズ言語”と呼ばれる中間言語がベースになっている。利用者は、データベースなどに関する専門知識を必要とせず、自然言語で情報を自由に引き出すことが可能。

 とくに、複数のデータベースを統合的に扱えるだけでなく、その中からルールを抽出して知識を取り出し、その知識を統合していくこともできる。また、BLASTなどの解析ツールを組み込むためのインターフェース機能も備えている。ナレッジマネジメントのプラットホームとして世界的にもユニークな製品だ。

 プログラム開発は、NECソフトの日本人技術者チームが全面的に担当したが、ワールドワイドでの展開を念頭に置いたため、まずは英語版での製品化を先行させている。ただ、今年度内にはメニューやメッセージの日本語化を含め、日本語の自然言語を受け入れることができるようにしていく。

 セマンティックオブジェクツは基盤製品であり、具体的なアプリケーションに仕上げていくためにはパートナーとの協業が不可欠。とりわけ、バイオ/メディカル分野での採用例を増やしていく考えで、まずは特定顧客とのプロジェクト形態での事業展開を目指す。その第1号が、NECをはじめとする5社が共同で推進している「バイオ・IT融合による多元たん白質解析装置」プロジェクト(経産省からNEDOに委託された助成事業)で、その構成要素の一つであるバイオ用統合データベースシステムを構築するためにセマンティックオブジェクツを利用することになった。

 1980年代後半のAI(人工知能)ブームの時は、知識を人手で整理・記述する必要があったため、十分な知識が集まらなかったり、メンテナンスができなくなったりして、実用域に達することが難しかったといわれている。しかし、現在ではインターネットが発達して大量のデータを集めやすくなったほか、コンピューターの能力向上で扱えるデータ量も飛躍的に拡大した。つまり、知識を集めるためのデータソースには困らなくなったが、逆に情報が多過ぎて人手ではデータの検索・活用さえ難しくなってきているのが現状である。あらためてナレッジマネジメントの基盤が必要とされているわけで、その意味でもセマンティックオブジェクツの将来性には期待が大きい。