CCS特集:菱化システム
加CCGのMOEが好調な伸び、アジア市場でも実績
2003.06.26−菱化システムが独占販売権を持つ加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の「MOE」が好調だ。昨年度は売り上げが40%アップ、今年も同程度の伸びを見込んでいる。6月末には最新版のリリースも予定されており、とくに創薬研究支援システムとしての機能が大幅に充実するという。
MOEは、計算化学の専門家だけでなく、実験研究者にも使いやすいシステムで、ノートパソコンで十分に稼働する軽快性を備えている。最近では医学部関係のたん白質の研究者が利用する例も増えており、抗原と抗体の相互作用の様子を解析し、計算で仮説の検証をするなどの応用がみられるという。
MOEそのものはCCG独自の“SVL言語”で記述されたプログラムで、商用ソフトとしては珍しくソースコードが公開されている。菱化システムのエンジニアもすでにSVLを熟知しているため、画面の改造やプログラムの追加、外部ソフトウエアの組み込みなどのカスタム化ニーズに即応できる体制を組んでおり、実際にそうしたサービスを提供する例が多いということだ。今後は、MOEを基盤にした顧客との共同研究などにも取り組んでいきたいということだ。
とくに、今回の最新バージョンでは、新薬開発のためのファーマコフォアモデル機能が強化される。分子の多重配座を生成するプログラムが高速化するため、試薬カタログなどを一括で読み込み、ドラッグライクな分子だけを抽出、SDデータを使って脱塩・脱水処理をし、絞り込んだ候補化合物の多重配座を一気に発生させるまでの一連の処理を自動的に行わせることが可能。
また、MOEの内蔵データベース機能はすべてのデータを単一ファイルで扱うためファイルサイズ2ギガバイトの制限があったが、今回から外部データベースとのコネクター機能が提供された。オラクルやDB2、SQLサーバーにデータを格納しておき、それにMOEからアクセスすることが可能になった。
菱化システムは、昨年からMOEのアジア市場全体での販売・サポートにも乗り出しており、このほどシンガポールのバイオベンチャーであるエスバイオ社と年間ライセンス契約を結んだ。上海や韓国の製薬会社からの引き合いも寄せられており、市場拡大への期待がふくらんでいる。
一方、その他の製品では、独コスモロジックの「COSMOtherm」のユーザーインターフェースソフトを自社開発した。これは、分子軌道法の計算結果を利用して分子の熱力学物性を予測するソフト。もともとユーザーインターフェース機能がないため、ADME(吸収・分布・代謝・排出)特性予測などの用途ではMOEと組み合わせた提案を行っているが、物質の気液平衡を求めるなど化学工学計算に応用する場合は簡便な入力支援ツールを用意してほしいとの声に応えて開発したもの。
それ以外にも、英インフォセンスのデータマイニングツール「KDE」や米ケムインベーションの研究所統合情報システム「CBIS」などの新製品を戦列に加えており、今年はさらなる事業拡大を目指していく。