富士通が遺伝子間の関連性を探索するソフトを開発

約7億件の情報を独自にインデックス化、多角的・階層的視点でのマイニング

 2003.04.10−富士通は9日、複数の遺伝子相互の関連性を探索するためのソフトウエア「Xminer」(エックスマイナー)を開発、販売を開始すると発表した。独自につくり上げた6億6,000万件の情報を持つ遺伝子辞書“コネクションインデックス”を用いて、関連情報を瞬時に引き出し、さまざまな角度から有益な情報だけを絞り込むことができる。米NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)が収集しているデータを網羅的にカバーしており、研究効率を5倍以上に高めることができるという。まずは個人向けツールを25万円で売り出すが、今年の夏には企業内のデータや既存システムとの連携を可能にしたエンタープライズ版を用意する。このようなコンセプトの製品は世界でも初めてだとしており、海外も含めた拡販を目指していく。

 Xminerは、遺伝子やたん白質、酵素などの関連する情報を結び合わせた“コネクションインデックス”と、遺伝子間に存在するネットワークを浮かび上がらせ、それをわかりやすく視覚化するグラフィックツール“コネクションマイナー”から構成される。今回発売したのは簡易版の「Xminer-Lite」で、機能強化したマイニング機能に加えて遺伝子配列の表示ツール“ゲノムマイナー”をセットにした「Xminer-Personal」(Windows版)、企業全体のバイオ研究インフラに発展させることを可能にした「Xminer-Enterprise」(Solaris版)を今年の夏に製品化する。

 基本となる遺伝子辞書であるコネクションインデックスは、NCBIが提供しているLocusLink(ローカスリンク)とUniGene(ユニジーン)から遺伝子情報を抽出し、ジーンオントロジーコンソーシアム(GOC)が規定するオントロジー(用語間の階層関係[組織という項目のなかに感覚器官という項目があり、その中に耳と鼻があるというような言葉の概念構造を階層的に表わしたもの])に従って情報を関連づけたもので、8万件の遺伝子情報(ヒト2万件、マウス4万件、ラット2万件)と、遺伝子機能(たん白質の機能)や文献情報などを含めて6億6,000万件のデータが登録されている。このインデックスづくりは富士通独自の技術によって機械化されており、現時点では情報の総件数はすでに7億1,000万件を超えているということだ。

 このコネクションインデックスを利用して、調べたい特定の遺伝子群の相互ネットワークを探索するのがコネクションマイナーの機能である。同社が特許出現中の技術を利用し、遺伝子間の関連性を抽出したり、それを見やすく再配置したりすることを可能にした。フィルタリング/マイニングのキーになるのは、GOCが規定した7種類のオントロジーで、具体的には遺伝子機能(Function)、文献情報(Reference)、発現組織(Phenotype)、細胞内局在性(Localization)、組織(Tissue)、たん白質ドメイン(Domain)、EC番号(EC-number)の7つ。この7種類の大項目とその中に含まれている階層的な用語を使って、視点を切り替えながら関連性の高い遺伝子群をグルーピングし、それぞれが具体的に何の情報でつながっているのかを瞬時に理解することができる。

 文献データベースのPubmedにリンクしているので、マイニングしたデータの詳細を文献から調査することが簡単に行える。バイオ研究では、研究者は調べるべき文献を絞り込むのに多大の時間を費やしているのが実態であり、データマイニングから文献調査までが一貫して行えるXminerによって、研究効率は大幅に向上すると期待できるという。

 具体的な利用法としては、マイクロアレイ解析にともなう研究業務の加速と進展に寄与しそうだ。マイクロアレイ実験の結果、たくさんの発現データが得られるが、さらに考察を進めるためには、文献調査によって発現した遺伝子および関連する遺伝子ネットワークの詳細を知る必要がある。しかし、情報の洪水の中から有意義な情報を探し出すのは困難で、ある程度の幅を持たせて実験を繰り返してターゲットを絞り込まざるを得ないケースも多かった。 Xminerにより、少ないマイクロアレイ実験で的を射た知見が得られるため、実験コストの抑制にも効果があると思われる。

 富士通では、夏に製品化するエンタープライズ版をもって企業向けの本格的な導入活動に力を入れていく。企業ユーザー向けのサービスメニューも豊富に整え、ポストゲノム研究のインフラとしての採用を強力に呼びかけていく。今後2年間に国内で100本/5億円の売り上げを見込んでいる。海外ではWinMOPACなどの販路を用いてパーソナル版の販売をメインにする予定だが、現地のシステムインテグレーターなどと協力し、エンタープライズ版が展開できる準備も進めたい考えだ。