米ハットコマース:チャールズ・クラーク社長インタビュー
DCMソリューションを提供、対日戦略を本格化
2003.04.10−米ハットコマースが、本格的に日本市場で攻勢をかける。同社のソリューションは、販売プロセスの自動化と統合化を実現するDCM(デマンドチェーンマネジメント)と呼ばれるもので、既存のERP(エンタープライズリソースプランニング)やSCM(サプライチェーンマネジメント)を補完して、企業の競争力を高め、コスト削減と収益向上を実現できる。とくに化学品産業への導入に力を入れているが、インダストリーセールス担当のチャールズ・クラーク副社長は「日本の化学産業が国際市場で勝ち組になるために当社のソリューションが強力な基盤になる」と強調する。その特徴や対日戦略について聞いた。
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SCMが原料調達や物流などのサプライ側にフォーカスしているのに対し、DCMはデマンド側のニーズに即応し、販売のコスト削減と売り上げの増大をもたらすことを目標にしている。デマンド側に着目したシステムとしてCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)も普及してきているが、クラーク副社長は「DCMとCRMはやろうとしていることは似ているが、CRMは顧客情報を内部でいかに活用するかが主眼であり、顧客が直接に利益を感じることはない。しかし、DCMは顧客がメーカーの情報を活用できるようにするため、CRMとは切り口が違う」と解説する。
実際に同社が提供している「HAHTコマーススイート」(商品名)は、注文管理、顧客サービス管理、製品情報管理、チャネル管理、ビジネスインテリジェンス(BI)などのサブシステムから構成される。同社は1995年の設立で、最新の製品は今年1月に発売したばかりのバージョン7.2に当たる。昨年7月、当時のバージョン7.0の日本語化と販売で日立システム&サービスと提携しており、まさにこれから日本語版の本格的な販売活動を開始していくところだという。
同社では、化学産業と消費財産業、組立加工産業の3つの業種にフォーカスしており、すでに世界で90社以上の導入実績を持つ。需要家としてそれに接続している企業は800社以上あり、その中には日本企業180社が含まれている。日本市場では、年内に10数社への販売実績を築きたいとしている。
クラーク副社長は、化学産業におけるeビジネスに関して、自動化、統合化、最適化の3つの段階があると説明する。「1990年代後半から2000年にかけて大手化学会社がインターネット上で製品情報の提供を開始したのが始まりで、今年あたりで自動化のフェーズが浸透し終わるとみている。この段階では、需要家のセルフサービスによりネット上で注文が行え、需要家は注文や配送の状況をトラッキングできる。ただ、システムは完全に統合されておらず、背後では手作業での再入力などの手間が残っている。次いで統合化のフェーズになる。早い企業は2年前から取り組んでおり、来年には広く行き渡るだろう。この段階では、有線・無線のウェブアクセス、FAX、XMLフォームなどマルチでの注文処理が可能で、受注から出荷までのすべてのプロセスが統合され自動化される。最後が、自動化されたシステムを最適化するフェーズだ。例えば、顧客のタンク内の製品容量が減ってくると、センサーから連絡が入り、自動的に売買処理が行われて製品を補充するということも可能になる。需要家側とのコラボレーションがさらに深まっていく」という。
また、クラーク副社長は、化学品と消費財を比較して、「消費財は小売り店の数が多いので、情報伝達を早くして最新製品を知ってもらえなければ販売機会を失ってしまう。印刷物の販売資料を全店に届けていたのではコストの面からもたいへんだ。そのため、電子カタログ作成や商品ブランドの管理、キャンペーンなどの販売促進がまずシステム化の対象となり、その後に受発注管理へと業務が進んでいく。それに対し、化学品は注文処理のトランザクション管理が最も重要になる。そこで、注文管理と顧客情報管理システムの導入が最初になり、次いで商品カタログ管理へと展開するケースが多い」と分析する。
HAHTコマーススイートは多くのコンポーネントから構成されており、ユーザーはそれぞれの状況に応じて自由な順序で導入を進めることができる。また、SAPのERPシステムをはじめとする他社システムとの連携が容易な点も特徴。
化学産業における導入実績は、アベンティス、オキシデンタル・ケミカル、バセル、セラニーズ、デグサ、SASOL、シェブロンフィリップスなどで、クラーク副社長自身もハットコマースに入社以前はオキシデンタル・ケミカルでアジア太平洋担当副社長を務めていた。4月からはハットコマースの日本事務所を開設し、オキシデンタル日本法人の鎌居宏社長を代表に招いている。日立システム&サービスとの連携を密にし、国内での事業拡大を目指していく。
クラーク副社長は、日本の化学産業に対し、「まずはeビジネスの自動化と統合化に取り組んでほしい。また、今後グローバルに欧米のマーケットを相手にするためには統合化から最適化のステージへと進んでいく必要がある。当社のソリューションとサービスで、日本の化学産業の国際競争力強化を全力でサポートしたい」と述べている。