Row2テクノロジーズが合成経路設計支援システムを国内販売

175年間の商業的プロセスを知識ベースで網羅、受託サービスも提供

 2003.07.17−米Row2テクノロジーズ(本社・ニュージャージー州、ケン・バクシCEO)は、新規化合物の合成経路設計を支援するソフトウエア「ChemSpire」(商品名)の日本における本格的な販売活動を開始した。医薬、農薬、香料、各種ファインケミカル、ポリマーなど、さまざまな有機化合物を対象にでき、生産スケールやコストを考慮した商業的な合成プロセスの開発・検討に役立つ。日本事務所(二宮一夫代表)を通じて販売するが、同社ではさらに特定のターゲットの経路探索を請け負うコンサルンティングサービス「ルートデザイン」も提供しており、ソフト導入前の技術検証の目的も兼ねて積極的に紹介していきたい考えだ。

 Row2テクノロジーズの設立は2001年。現在の従業員数は約40名で、半分は化学の専門家だという。開発拠点はインドのムンバイに置いている。サイエンティフィックアドバイザリーボードには、ジェームス・ヘンドリクソン教授(ブランダイス大学)や船津公人助教授(豊橋技術科学大学)など、合成経路設計分野の世界的研究者が名を連ねており、学問的なバックアップを行っている。

 同社のChemSpireは、任意の有機化合物を製造するための原料や中間体、その合成ルートを知るためのソフトウエア。その最大の特徴は、有機合成化学の175年間の歴史を網羅し、実際に商業化された合成反応プロセスだけを収録した知識ベース「ChemVault」を備えていること。2,000万以上の最終製品に至る反応情報を独自に調査・収録したもので、商業的に実現可能な経路だけを探索することが可能。実際に原料の調達が可能かどうか、中間体は入手できるのか、その品質や価格はどうか、プロセスの一部に特許に抵触しそうなところがないかなど、プロセス開発の過程で生じるさまざまな問題を解決する機能がある。

 このため、基礎研究の段階で利用するソフトではなく、例えば新薬開発の分野では臨床開発に入った段階でパイロットスケールなどでの現実的なプロセス開発を検討する際に威力を発揮するといえる。

 とくにユニークなのが検索機能。構造式を利用して完全一致検索、部分一致検索などの通常の検索機能だけでなく、まったく新規な化合物の合成経路探索に役立つ“シンセティックアナログサーチ”(合成類似性検索)機能を持っている。目的化合物の構造式を入力すると、有機合成の知識を加味したかたちで類似の反応情報をみつけ出し、原料から中間体、目的物にいたる反応経路を示してくれる。

 また、“アドバンスドアナログサーチ”は、目的化合物を部分構造に分割し、各部分構造の重要性を9段階に重み付けして検索することができる。“シンセティックアナログサーチ”は、いわばこのデフォルト設定での検索であり、“アドバンスドアナログサーチ”を行うことで細かなチューニングが可能。通常は、“アドバンスドアナログサーチ”でヒットの幅を広げるといった使い方になるという。

 さらに、“スターティングマテリアルサーチ”は、目的化合物に対してその原料となる可能性のある物質をすべて提示してくれる。ヒットした原料が製品なのか中間体なのかも明らかにされる。

 ヒットした合成経路は専用のルートビューアーで表示されるが、原料や中間体をクリックすると、それに至るための経路をさらに検索できるので、さまざまなパターンの経路探索を簡単に行うことが可能である。

 なお、ChemSpireのソフト価格は約1,000万円からで、Windows環境で利用できる。受託サービスのルートデザインは1件当たり3万ドルとなっている。